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39話

実に迂闊だった。

ルベライトはこの後の展開を知っていたのに、まん

まと引っかかってしまったのだ。


毒味役と言ったが、実際はアレキが食べた後でタン

ザナイトとシトリンが食事をするのだ。


なのに、シトリンはいきなり身体が火照りだして苦

しくてタンザナイトに抱きつくようにして彼を誘惑

するのだ。


タンザナイトも満更でもなく、そのまま救護室へと

行ってそこのベッドで……。

という展開が待っているのだ。


実際は、お茶に仕組まれた媚薬のせいだった。


両方のお茶に含まれている媚薬は毒味役と言って

ルベライトが食べ物を食べた後に一気にお茶を飲ん

だ事が原因だ。

少しなら身体が火照るだけで済むのだが一気に飲み

干したせいで目眩を起こし倒れたのだ。


意識が戻ると近くで息遣いを感じる。


するとノック音がしてアレキが入ってきた。

そこでタンザナイトが話だしたのだった。


一通り話が終わるまで待つと、いつ起きようかと

迷う。


機嫌の悪そうなタンザナイトの目の前で起きるのも

少し気まずい。

それにまだ身体が気怠くて、熱い。


媚薬の効果は治癒では取り除けなかったらしい。


「早く目を覚ましてくれ……ルベライト、せっかく君

 とのデートだったんだ。今日くらいは私の側にず

 っといてくれ…」


多分、タンザナイトの独り言だろう。

だが、耳元で言われるとつい、起きてしまいそうに

なるのだった。


そっと立ちあがると、足音が遠ざかった。


ハッと目を覚ますと、ベッドの上である事を確認

した。

そして身を起こそうとして、タンザナイトと目が

あった。


「起きたのだな」

「あ……えーっと、おはよう?」

「身体はどうかな?」

「ちょっと熱いのと、少し怠いです」

「そうか……食べ物に何か混入があったかもしれ

 なくてな。ルベライトはこのままここで安静に

 していなさい」

「………タンザナイト殿下は…」


ルベライトは言いかけると、言葉をとどめた。

これ以上は言ってはいけない。

これ以上、タンザナイトとの距離を縮めたくはない

からだった。


結局その日はベッドの上で過ごす事になった。

寮には帰らずタンザナイトの部屋へと運ばれる事に

なった。

勿論、アレキもお目付け役として一緒にいる事にな

った。


「アレキ、見張るなら部屋の外でもいいだろう」

「いえ、何か間違いがないかこの部屋でお護りする

 ように言われております」

「タンザナイト殿下、俺はかまいませんよ。今日は

 お世話になりました。俺はアメトリン派閥なので

 気まずいかと思いますが…」

「違うだろ!ルベライトはいつでも私の味方だろう?」


切実に願うようにじっと見つめられると、調子が狂う。


「はい、俺はいつでもタンザナイト殿下の味方です」

「あぁ、私のルベライト。もう、ずっと私の側にいて 

 くれ」

「それは………」


不出来な息子といえど、ファールマン家としてはアメ

トリン殿下の方を選んだのだ。

これはもう隠しようのない、事実だったのだった。

ルベライトにできる事はほとんどない。


側にいられないし、いるのは危険だと察してからすぐに

アレキにタンザナイトを託したのだから。


いつもアレキが側近騎士になるのをことごとく邪魔して

きた。

だが、今は違う。

無事に断罪されず、真っ当な王になってほしい。

そう、心から願っているのだ。


「タンザナイト殿下、俺には何も力はありません。で

 すが、心はいつもお側におります。ご自分の道を、

 真っ直ぐにお進みください」

「何を言っているんだ?ルベライトが側にいなくては

 意味がないだろう?」

「それは………恐れ多い事で……」

「そんな言葉はいらない。私の側にいろ。それもでき

 ないのか?」

「それは…………」


ルベライトが言葉に迷うと、横からアレキが口を挟ん

だのだった。


「ルベライト殿の実家はファールマン家。あそこは

 アメトリン派に組みする事を宣言したばかり、そこ

 にルベライト殿をこちらの陣営にというのは無理で

 しょう。今は、そっとしておくのが良いかと」


(お、いいことを言うじゃん。そうそう、そう言って

 欲しかったんだ)


ルベライトは心の中で頷くとタンザナイトを見つめた。



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