38話
出店に行くと、腕いっぱいに持ちきれないほどの
食べ物を渡された。
横にいるルベライトも満足そうでタンザナイトは少
し機嫌が良くなる。
「一緒に食べようか?」
「そうですね。毒味役も入りますし、あそこの木陰
のところで食べますか?」
「あぁ、そうだな」
タンザナイトが言うと、控えていたメイド達が忙し
なく場所を整えてくれた。
ルベライトとは久しぶりな気がする。
昔だったら、よく二人っきりになれたのだが、アカ
デミーに入ってからは、二人っきりになれずにいた。
側に控えている側近騎士アレキは、当たり前のよう
にルベライトがいるはずだったタンザナイトの横に
控えている。
それがルベライトの頼みだと言うのだから余計に気
に入らない。
食べ物を並べると、ルベライトが一口づつ味見をし
ていく。
実に美味しそうに食べる。
彼はこんな顔をしていただろうか?
タンザナイトの側にいた彼は、いつも何かに嫉妬
していた気がする。
少しでも、自分を見て欲しくて他の誰かを気にす
るふりをすると、彼はタンザナイトの世話を自ら
引き受けると、暫く側を離れなかった。
「美味しいかい?」
「うん、これ美味しいな…こっちも…」
「ふっ……なんだか楽そうだな」
「うん。どれも美味しくて……あ、もう大丈夫……」
そう言われて差し出してきた彼の様子がいきなり
おかしくなった。
息が荒くなり、顔色も悪い。
座っていられなくなったのか崩れるように椅子から
傾くのをすかさず受け止めたのだった。
「おい、ルベライトっ!」
食べた物の中に毒でも含まれていたのか?
咄嗟に周りを振り返ったが、ザワザワと騒がしくな
るだけだった。
「早く、治癒師を呼べ!」
タンザナイトは叫ぶとルベライトを抱えて医務室へ
と向かった。
人が多い場所では何かと不便だと考えたからだ。
「アレキ!さっきの食事を全部調べさせろ!全部だ。
いいな!」
「はい、すぐに」
タンザナイトの声は凄みを増した。
結局、治癒師が来て治療が終わるとベッドに眠る
ルべライトを横目にタンザナイトは報告を待った。
外でノック音がすると、アレキが戻ってきていた。
「入れ」
「タンザナイト殿下、ご報告を……」
「あぁ、誰がルベライトに毒を盛ったんだ?」
「それは………」
いつもより低い声。
あきらかに怒っているのが分かるだけに言いずらい
話だった。
「それが……毒は検出されなかったとの報告が…」
「毒は入ってなかったと?だったらこのルベライト
の症状はどう説明するつもりだ?」
「それは……恐れおおい事ですが…」
「自作自演だとでも言うのか?」
「いえ、それは……」
食べ物には毒は入ってなかったと言うのだ。
「偽る事は許さないが、それでも毒は入ってなか
ったと?」
「………はい。毒は検出されなかったと言ってい
ました。それに、出店の食べ物はほとんど皆が
食べている物なので……」
「毒が入っていれば、もっと被害が出ているという
事か…だが、ルベライトの症状はあきらかに異常
としか思えん」
眠っているルベライトを眺めるとまだほんのり顔が
紅いのだった。




