37話
両殿下の前であるため、試合の観覧席に身分の
高い貴族が座っていたのを知っているルベライ
トは模範的生徒の態度を再現したのだった。
どこに出しても恥ずかしくない見本的な態度
とはここでいう貴族社会の格差社会を反映した
行動を意味していた。
礼儀正しい挨拶をすると、すぐにでも退出した
そうにしているルベライトを引き留めたのは、
タンザナイトだった。
「今から私と一緒に来るんだ」
「殿下……ですが。我がファールマン家は…その」
「チッ……アメトリンに付いたと言いたいのだろ
う?だが、私が側にいて欲しいと思うのはルベ
ライトなのだ。ファールマン家ではない」
はっきりと言い張ると、タンザナイトはルベライト
の手を掴むと歩き出す。
拒否権など最初からなかったのかもしれない。
出店を一緒に見て回りたい。
静かな場所で二人でお茶をしたい。
そんなささやかな事が、したかったらしい。
「殿下!こちらをお持ちください」
「こちらも食べてください」
「でしたら、うちのが一番です、持っていって下さい」
我先にと、押し寄せてくると、各自が自慢の出店で売
っている商品を差し出してきたのだった。
「色々と貰ってしまいましたね」
「あぁ、そうだな……ルベライトも一緒に食べるだろ」
「そうですね。味見役でもしましょう」
「私はそんなつもりは……」
「ですが、殿下の口に入るものを味見役なしで食され
るのはいかがなものかと。では、あそこのベンチな
ら静かそうですし、いかがですか?」
木陰で、涼しそうだった。
メイドたちが先にテーブルにクロスを敷くと椅子には
ふわふわのをクッションを置いた。
テーブルクロスの上にはティーカップが即座に置かれ
さっきもらったばかりの食べ物をおいた。
「では、先に失礼して………」
ルベライトは何も気にせず口に放り込んだ。
確かに、王都一と言われるアカデミーの出店だった。
どれも味がいいのだ。
家庭の味というのではなく、レストランの味という
感じだ。
「うん、これ美味しいな…こっちも…」
「ふっ……なんだか楽そうだな」
毒味役としてルベライトは一通り食べ終えるとタン
ザナイトの前へと渡した。
「問題ないかな…………!」
そう言いかけてふと、違和感を感じた。
ただ食事を食べただけなのに、視界が揺れる事がある
だろうか?
そういえば、シトリンがタンザナイトから餌付けシー
ンがあって、その後……。
「あれ…。何かおかしい……??」
「おい、ルベライトっ!」
座っていられなくなると、地面に蹲るように倒れ込
んだのだった。
「すぐに治癒師を呼べ!」
タンザナイトの声が遠くで聞こえる。
荒い息が耳元でうるさく聞こえるが、身体中が熱く
て気怠くて意識が遠ざかる気がしたのだった。




