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34話

ルベライトはシトリンと一緒に出店を回ると色々と

買い込んだシトリンを見てクスッと笑った。


「ルベライト君も美味しそうでしょ?」

「まぁ、そうだな。だが、こんな量を全部食べれる

 のか?ほら、あそこの木陰にベンチがあるから、

 そこで食べたらどうだ?食べている姿を見られる

 のは嫌だろう?」

「そうだね」


貴族は食べ方が上品なのだが、平民出身のシトリン

は豪快に齧りついて食べる。


食堂でも、周りからはヒソヒソと言われる事が多く

食べていても美味しく食べられないのだ。


こう言う時こそ、存分に食べてもいいように他から

見えないような場所で食べさせてあげたかったのだ。


ベンチの側では、何やら揉めている声が聞こえてき

ていた。



「こんなところで虫が騒いでるじゃないか?」

「おいおい、お顔が泥で汚れちまってるぜ?帰って

 着替えて来たらどうだ?」

「着替えがないなら、洗ってやろうか?」


蹲る双子に向けて投げつけられる泥にシトリンは

怒りを露わにしていた。


「君達!一体何をしているんだい」


声を上げたシトリンを見て、彼らは嘲笑うように

彼らから視線をずらすとシトリンの方を見た。


「何かと思ったら平民じゃないですか?先輩ぶって

 いられるのは今のうちだけですよ」

「平民って…君達のやっている事は貴族のする事で

 はないだろう?貴族なら模範になるような行動を」

「煩いな〜、平民の分際でいちいち説教とか…」

「おい。待て……後ろ」


シトリンしか見えていなかったのだろう。

服で平民と判断したのだろうが、その後ろにいるル

べライトを見て言葉を失ったのだ。


「シトリン、落ち着けって。それに、君達の行動は

 貴族としては最低だな……俺もよーく覚えておこう」

「ルベライト……様……」

「なんで平民と一緒に…」


口々に平民と口にしたが、ルベライトが睨みつける

とすぐにその場を逃げるように立ち去ったのだった。


「君達大丈夫だった?」


シトリンは汚れた服を魔法で綺麗に洗い流したのだ

った。


「ごめんね。洗う事は出来ても乾かす事はまだ…」

「いや、そこまでできれば十分だろ?」


そう言うとルベライトは濡れた服についたであろう

水滴をゆっくり空中へと霧散させていった。

水分だけ取り除けばカラカラに乾く。


「ルベライト君、凄いよ!」

「凄いのはシトリンだろ?着ている状態で服を洗う

 のなんて俺にはできないよ」

「そんな事ないよ。僕は着たまま洗うのはよくやっ

 てたから……それにしても失礼な人達ですね」

「ああ言うのが貴族だと思われたくはないが、実際

 はそう言うものさ」


ルベライトは自分も貴族だからこそ、あんな風に人

を見下したくはないと思ったのだった。


「助けていただき、ありがとうございます。僕は

 モルガ・ナイト。こちらは弟のアウイ・ナイト

 と言います」

「ありがとうございました。」


兄弟のように見えるが、彼らは双子なのだ。

来年入ってくる事になっているはずだった。


「来年は無事に入れるといいな」

「え………どうしてそれを…」

「インディゴライト・ノース先輩の従兄弟だろ?」

「はい、兄さんを知っているのですか!あ!」


今やっと気づいたのだろう。

会場でインディゴライトと一緒に組んでいた魔法科

の一年生だった。

名前をルベライトと紹介されていたから、知らない

人は少ない。


「ルベライト先輩………」

「じゃ〜な。気をつけて帰れよ」


ルベライトを見て、彼らは予想外の反応に驚いた事

だろう。

そもそも、社交界では有名な人物だったからだ。


兄のように紳士的ではなく、下級貴族を馬鹿にした

ような態度が、他貴族には嫌われる原因だった。


だが彼はタンザナイトのそばを離れなかったし、タ

ンザナイトも、彼を優遇していた。

だから、彼はタンザナイトの側近になるものだと誰

もが思っていただろう。


だからこそ、今のうちから近寄って媚を売るものも

増えて来たのだった。


だが、最近の彼は誰かを贔屓する事をやめて、平民

と連むようになった。


身分をかさにきて威張ると、ルベライトの心象は一

気に悪くなるのだ。

そして、問題なのは、アメトリン派閥もルベライト

を支持しているという点だった。


タンザナイトについても、アメトリンについても、

結局はルベライトに気に入れられるのが一番の近道

のように思われた。

だが、それはなかなかには難しい難題でもあった。


ルベライト自身が、誰にでも分け隔てない態度を取

るからだった。

自分だけが特別という理念がないのだ。


だから何をやっても、手応えが全く感じられないの

だった。


「さっきの子達、大丈夫だったかな?」

「大丈夫だろ?さっきインディゴライト先輩が走っ

 て行ったし、もう絡まれる事もないだろ」

「ルベライト君、かっこよかったよ」

「すぐに止めに入ったのはシトリンだろ?彼らを助

 けたシトリンの方がかっこいいよ」


威張らず、自慢もしない。

ましてや、手柄すら譲るようなルベライトをシトリン

は尊敬するような眼差しで眺めていたのだった。








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