33話
この戦法を打ち破れる人は、誰もいなかった。
順々決勝までくると、あとは明日に持ち越しとなった。
「おつかれ様!」
「あぁ、ありがとう」
「それにしてもルベライト君の水魔法凄いね!攻撃魔法
かってくらいに濡れるだけかと思ったのに……」
「見えていたのか?」
「うん、あんな方法があったなんて知らなかったよ」
「魔獣にも使えるからシトリンもコントロールをしっ
かり練習するといいよ」
「うん、そうだね!」
あとは自由に回れるとあって、シトリンは楽しそうだ。
インペリアルトは伯爵家の出なので、やる事は色々あ
るのだろう。
ルベライトは兄が父や他の貴族とのパイプ役になって
いるせいか、やる事がほとんどなかった。
「ルベライト君は大丈夫なの?貴族の……ほら」
「大丈夫だ。俺は……兄がいるから。誰も俺に期待な
どしないから」
そう、闇属性の息子など期待すらされない。
「そうだ、珍しい模擬店が出ているらしいから行こう
ぜ?シトリンは少しは食って太った方がいいぞ」
「珍しい店?行きたい!」
食べ物には興味津々なのだろう。
すぐに食いついたのだった。
♦︎♦︎♦︎
木陰のベンチで卵をふんだんに使ったサンドを頬張
る兄弟がいた。
ここには来年入学を控えており、彼らは下見も兼ね
て来たのだった。
母方の姉妹の息子が主従トーナメントに出ていると
聞いて一回見てみたいと二人だけで来ていた。
爵位は男爵。
馬車を雇えるほどの贅沢はできないが、出店で好き
な物を買って食べるくらいには自由に使えるお金は
ある。
「さっきの試合すごかったね」
「あぁ、そうだな。兄さんの勇姿はしっかり焼き付
けて母様に話して差し上げよう」
「そうだね!そうだ気をつけなきゃいけない人がい
るんだった、ファールには注意しろって言ってた
よね?」
「そうだな。身分の低い人には八つ当たりが酷いと
聞くからな、目を付けられないように気をつけな
いとな」
兄弟はあまりの美味しさにパクパクと夢中に食べた。
最後の一口を口に入れる瞬間、いきなり泥が顔に命
中したのだった。
「うわっ……」
「大丈夫か、アウイ」
「大丈夫だよ、モルガ兄さん」
「誰だ!なぜこんな事をするんだ!」
大声で怒鳴るモルガに、木の後ろから数人の貴族が
顔を出した。
彼らはルベライト派閥の奴らだった。
何かにつけて嫌がらせをしてくる奴らだ。
ルベライト派閥とはタンザナイト殿下を推す人達で
形成されている。
逆にこの兄弟はその逆のアメトリン派閥だと思われ
ているのだ。
「こんなところで虫が騒いでるじゃないか?」
「おいおい、お顔が泥で汚れちまってるぜ?帰って
着替えて来たらどうだ?」
「着替えがないなら、洗ってやろうか?」
そう言うと、更に泥を彼ら兄弟にぶつけたのだった。




