32話
主従トーナメントが開催される時間になると、大き
な花火が盛大に上がった。
参加者は列を成して入場していく。
そして、1箇所だけ歯抜けのようになった場所があった。
騎士科の生徒だけが立っていて魔法科の生徒がいなか
ったのだ。
「ルベライト・ファールマン、列に並びなさい!」
いきなり呼び出されると、ルベライトは驚いて観客席
から立ち上がった。
「ふぁ!?」
「ルベライト君、エントリーしてたの?」
「して……ない……」
顔を真っ青にして否定したが、拡声器で呼ばれては
行かないわけには行かなかった。
待っていた騎士科の生徒はよりにもよって物語り通
りのインディゴライト・ノース子爵だった。
「どうして俺なんですか!」
「仕方ない……」
いきなり呼び出され、連携も取れない初めての相手
となど普通に考えたら無謀としか思えなかった。
初戦、ルベライトは頭を悩ませながらインディゴラ
イトに作戦を話したのだった。
「ここで俺が水魔法で動きを止めるので、一気に
走りぬけてリーチをかけて下さい」
「待て、土魔法ならまだしも水魔法で足止めなど
出来るのか?」
「それは問題ないです。それに、俺の土魔法は…」
手のひらに小さな人形が立ち上がった。
「これが精一杯なんです」
「なるほどな。では、初めから突っ込んで魔法科を
潰してから二人でもう一人をやった方が良くない
か?」
「それは無理です。向こうは連携も取れてますし、
こっちは即席なんです」
「確かにな……分かった」
一応はアメトリンの側近、物分かりはいいらしい。
それにしても、誰がルベライトをエントリーさせた
のだろう。
シトリンにばかり気を取られていたせいで自分の事
などすっかり忘れていたのだった。
一試合目は、順調に進んでいった。
ルベライトの水魔法は実に効果的に働いていた。
「では。初戦、開始!」
先生の合図に相手も魔法を構える。
相性の悪い火魔法の使い手だった。
ルベライトは細かな水滴を一気に相手にぶつけた。
攻撃力はほぼ皆無なので当たっても全く効果がない。
ただ濡れるだけだった。
それがわかると避けることすらしなくなった。
「それで足止めのつもりか?やっぱり一年だな」
「………」
敵の騎士科の生徒は皮肉にもルベライトと同じ子爵
の出だ。
馬鹿にされる覚えはない。
こちらの騎士科の生徒は二学年の首席だ。
下手に飛び込んで来るのを躊躇っているらしい。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。では、行きますよ」
ルベライトが息を吸うとさっきまでぶつけていた
水の粒が丸く球体になって浮き上がる。
そして次の瞬間小さな粒はまるで生きているかの
ように重なって大きな拳だいの大きさになると敵
口と耳、鼻へと向かった入っていく。
頭全部覆うのはできなくもないが、見た目可哀想
と思って出来るだけ小さな粒にして最小限で塞ぐ
事にしたのだった。
魔法科の生徒も騎士科の生徒もいきなりの動きに
何も出来ず、ただ苦しみもがいた。
その隙を逃すのは愚策といえよう。
インディゴライト・ノースという人物は動き出し
たら誰よりも冷酷な人物だった。
アメトリンの為ならどこまでも非情になれる人物
だった。
もしかしたら、ルベライトと組むように言ったの
はアメトリンなのかもしれないと心の中で思うの
だった。
あっという間に決着がつくと、観客からは何が起
きたのかさえわからないようだった。
「なかなか、魔法のコントロールが上手いようだな」
「それはインディゴライト先輩がついてますからね。
多少しくじっても挽回してくれるでしょう?」
「あぁ、一人で二人を相手のしても平気だ」
「……そのようですね」
ルベライトが使えない人間であっても、インディゴラ
イト・ノース一人で勝ち進むつもりであったらしい。




