29話
あれから何度かアメトリンからルベライトに従者
にならないかと申し出があった。
これはきっとあの時の事が原因だろう。
ここは読んだ小説の世界なのだと言ったところで
きっと信じてはくれないだろう。
それに、多少変わってしまったところもある。
それは主人公のシトリンはいまだに誰とも好感度
を上げるイベントを起こしていないという点だ。
インペリアルトの好感度はもうすでにMAXな気は
するのだが、別の人はそうではない。
もうすぐアカデミーあげての魔法祭が行われる。
魔法科と騎士科が一緒になって協力し合うお祭り
なのだ。
年に一回の大きな祭典で、国王陛下も観に来る程
に盛大に行われる。
街の至るところに兵士が厳重に配置されて他国か
らの嫌がらせに備えている。
この祭りのメインイベントは2年生と3年生が出る
主従トーナメントだった。
魔法科の生徒と騎士科の生徒が手を取り合って一緒
に戦うのだ。
優勝すると名誉と賞金が与えられる。
そして、国の重鎮の推薦が貰えるのだ。
いわば、就職に有利だというわけだった。
1年生はまだ魔法も未熟なので参加する事は稀なの
だが、確かこの時シトリンが他の生徒の嫌がらせ
でエントリーさせられてしまうというハプニング
が起こるのである。
「ルベライト君!もうすぐ魔法祭だね。もしよか
ったら一緒に回らない?」
「もちろん構わないけど、幼馴染みの先輩はいいの?」
「アルトならいいよ。女子に囲まれて鼻の下伸ばして
るみたいだし」
(あー、なるほど嫉妬かインペリアルトはシトリンに
一途なのだ。しかし、伯爵家に生まれたせいで他貴族
との交流も求められているのだろう)
「俺でいいならいいよ」
「やった〜、ありがとう!」
魔法祭に向けて、しばらく授業は実践形式のものが増え
るのだった。
今、ルベライトが使えるのは軽い土魔法と水魔法全般
だった。
シトリンの絶大の信頼のおかげか水魔法を使った攻撃
魔法からポーション作成にかけて楽にやれるようにな
った。
元々、勉学の成績が良かったせいか何が作りたいかを
思い浮かべるだけで材料もやり方も記憶が蘇る感じで
勝手に理解してしまっていた。
「ルベライトって、頑張ってたんだな……報われなか
ったけど」
いくらルベライトが頑張ってもシトリンには勝てなか
った。
これは物語りの性質上仕方ない事なのだが、もしそれ
を知らなかったら、ムキになって勉強していてもおか
しくはない。
『学年一位になるんだ』
過去のルベライトが毎回言っていた言葉だった。
「ルベライト君、一緒に組もう!」
「あぁ、分かった」
周りの視線が集まるのは気にしないようにしている。
シトリンはクラスではハブられている。
平民というだけで、誰も話しかけもしないのだ。
だから、平民であるシトリンがルベライトに声をかける
のは馴れ馴れしいと注意した生徒をルベライトである俺
はバッサリと切り捨てた。
そのせいか、今では遠巻きに見ているだけになった。
「ルベライト様、俺も一緒にいてもいいですか?」
「僕たちもルベライト様とご一緒したいです」
二人はポルダー・オパールと、フロー・ライトだった。
シトリンに怪我を負わせた事で暫く謹慎していたのだ。
親の爵位がこの度の事で男爵から準男爵へと格下げに
なったらしい。
一台限りの準男爵の位は子供には受け継がれない。
これがどれほど重い処置か、誰もが知っている。
彼らが爵位を戻すにはそれなりの功績を上げなければ
ならない。
ファールマン家派閥に属しておりながら、ルベライト
に怪我を負わせたなど派閥の中でも肩身の狭い重いを
する事だろう。
そこで彼はらルベライトと仲良くしてタンザナイトの
機嫌を直させる作戦に出るつもりだったのだ。
「……」
「お前たちはシトリンにちゃんと謝ったのか?」
「「……!!」」
二人は顔を見合わせると、気まずそうにルベライトを
見てくる。
「俺は平民だからと蔑む奴は嫌いだ。それに人を傷つ
けて平然としている奴もだ。謝れるうちに謝れ、そ
れができないなら俺の前に姿を見せるな」
「ルベライト様……」
「…………どうしてですか!どうしてあんなに頑張って
いたルベライト様がこんな平民ごときに遅れるとる事
があるのですか!」
黙って俯くフローと違い、ポルダーは口を開くと大声で
叫んでいた。
多分、この二人はかつてのルベライトの取り巻きなのだ
と理解した。
だから、誰よりもルベライトの事を知っているし、理解
してるのだろう。
だが、今のルベライトはかつての彼ではないのだ。




