21話
「まさかこれほどとはね…………で、どう?身体の
調子は」
アメトリンの言葉にハッと気づくと痛みもほぼなく
なっている事に気づいた。
それどころか肌にも張りが出ている気がする。
動いてみてもなんの問題もなさそうだった。
「すごい……最初はどうなるかと思いましたが…」
「凄いよね?ただ、見た目や効果に対して治療方法
に問題ありって感じだね」
「はい、流石にあんな痴態をずっと観察されるとは」
「でも、可愛いかったけど?」
「なっ………冗談でもそういうのはやめてください」
ルベライトは失礼かと思ったがその軽口を塞いで
やりたくなった。
「俺はこれで失礼します……」
「待ちなさい。せっかく助けてあげたんだから。
僕はまだ君から、お礼を貰ってないからね」
「なっ……… 何が目的ですか?タンザナイト殿下
の事なら、もう俺には何もできませんよ」
「そうかな?君ならタンザナイトの腹心になれる
んじゃないかな?」
「………」
「僕が王位につくように手伝ってよ」
「何を言って……高位貴族を味方につけておいて
騎士団も手に入れた人に何が必要なんですか?」
ルベライトが嫌味っぽく言うと、ドアの前にイン
ディゴライト・ノースが立ち塞がった。
「そうそう、君はなんで騎士団まで手に入れたって
思ったの?まだ完全には把握できてないはずだけ
どなぁ〜」
「掌握したようなものでしょ?騎士団長の息子の
ノース伯爵。それだけじゃない、この前の橋の
崩落事件の首謀者も捕まえたのでしょう?隣国
の……」
「そこまででいい。その情報はまだ公表されてい
ないはずだが………そうか、そういうのが得意
というわけか。まさかファールマン子爵家がね」
言い過ぎたか?
と思いつつ、この後処刑されるであろう人物を口に
出そうとしたところで言葉を遮られた。
何かを納得したようなアメトリンの表情に疑問を浮
かべつつも、今日は無事に帰る事ができたのだった。
あのままいたら、別の実験に付き合わされそうで逃げ
てきたというのが正解かもしれない。
「それにしても、兄さんがアメトリン殿下の側にいる
はずだけど……今回の事は何も知らないって事なの
かな?」
さっき話した橋の崩落事故は王都では結構有名な事件
だった。
他国の工作員が、流通の要と言える商人が多く通る橋
を夜間に落としたというものだった。
石で出来た頑丈な橋だったのだが、今は無惨にも馬車
の通行ができないくらいに破壊されたのだ。
代わりに下流に10キロ離れた橋を通る事になってしま
って街の人が不便がっているというものだった。
結局犯人は隣国の工作員で物資の流通を遅らせて、
取引き量を引き下げる算段だった。
そこに付け入った貴族がいて、その貴族は自分の
領地を通る商人に課税を貸して私腹を肥やしたと
言うのが事の顛末で分かった。
別にルベライトが言わずとも、アメトリンの部下が
調べて分かる事だった。
そこで騎士団が動いて解決した事で騎士団からのお
株が上がる手筈になっている。
「さっき言ったのまずかったかな……ま、いっか」
ルベライトはそそくさと寮へと戻ると自室へと戻っ
たのだった。
もう、精神的に疲れたので、寝ようと考えていたの
だが、どうしてもそれを許さない人物が立っていた。
「なんのようですか?インペリアルト先輩」
睨みつけるようにルベライトが言うと、それに気づ
いたインペリアルト・パーズは気まずそうにいきな
り頭を下げたのだった。




