13話
タンザナイトの機嫌は日に日に悪くなって行った。
せっかく準備したお茶会は、無事に終われはしなか
った。
最初に浮かべていた作り笑いは、過ぐに消えて敵意
に変わった。
しかし、どうしてあの場にインペリアルトを呼んだ
のだろう?
ルベライトを攻撃魔法で殺しかけた相手と楽しくお
茶など出来るはずもないと言うのに……。
アレキには全く理解できなかった。
そして、一番理科できないのはルベライトだ。
タンザナイトの前に姿を見せなくなったからだ。
アカデミーには来ているらしいというのは知っている。
ただ、タンザナイト殿下がいるところに会いに来ない
というだけなのだ。
他の学生と一緒に学生生活を送っている?
それは予想していない事だった。
なぜなら、あんなにべったり寄り添っていたからだ。
「ルベライトを探してきますか?」
「………いや……いい」
一瞬、何かを言いかけたがすぐに否定した。
アレキは側近候補だったのが、護衛兼側近という立場
になった事を少し安堵したのだった。
やっと陛下のご命令に従えられる。
そう思っていた。
タンザナイトが最近寂しそうな顔を見せる事が多くな
った気がする。
これは、どう見てもルベライトが姿を見せなくなった
からだとわかる。
アレキは悩んだ結果一年の教室へと見に行く覚悟を
したのだった。
♦︎♦︎♦︎
シトリンとよく話すようになったルベライトは今日も
一緒に食堂へときていた。
「ルベライト君、今日は変わった匂いがするね」
「あぁ、これは地方で有名なトマト煮込みだな。酸味
があって美味しいんだぞ」
「そうなんだ〜、本当にルベライト君は物知りだね」
「それほどでもないよ。俺はあまり………」
「おい、またお前か?あまりリンに近づくな」
ルベライトとシトリンが話していると、割り入るかの
ようにインペリアルトが後ろに来ていた。
それでも、前ほどの険悪な雰囲気ではない。
口が悪いのは平常運転なようだ。
「アルト!またそんな事言って!もう僕は大丈夫だっ
て言ってるでしょ?それにルベライト君は僕の友人
だよ?ほら、謝って!」
「うっ……悪かったよ」
「よし、アルトは謝れて偉いよ」
もう、どちらが年上かわからない。
シトリンは勉学でも実技でも大変優秀な生徒だった。
平民がここまで出来るのは、本当に不思議なくらい
なのだ。
そもそも文字もまともに読めない平民は多いという
のに、シトリンは難しい字もすらすら読めたのだ。
「そういえば、シトリンはどこで文字や計算を習
ったんだ?平民では大変だっただろう?」
「そんな事はないよ。近くに神殿で勉強を教えて
貰えたんだ」
「神殿で?それはどこの?」
「えーっと、それは…」
「お前が知ってどうするんだ?貴族だけが優遇さ
れるようにするつもりか?」
インペリアルトはどうしてもルベライトが嫌いな
ようだった。
「違うよ。シトリンがこれだけ優秀ならさ、平民
の中にも他に優秀な人がいっぱいいたんじゃな
いかなって思ったんだよ。優秀な人が国の役職
につく。そんな国じゃないと一部の貴族だけが
私腹を肥やす社会じゃダメだって思うんだ」
「ルベライト君ってなんだか変わったね。すっごく
いい事だと思う。前はすっごく怖かったけど
今は話しやすいし」
「あの時は悪かったよ。ちょっと焦ってたんだ。で
も………もういいんだ。これからは自分だけの道
を行くって決めたんだ」
「そっか、何があったかわからないけど、応援して
るね」
「おう、ありがとな」
「シトリンも頑張れよな!」
「……?」
何をとは言わない。
だって、この世界の主人公はシトリンなのだから。




