7株目 魔導協会に呼ばれてます
とうとう来てしまった。
魔導協会に行く日が・・・・・
お母様はわざわざ玄関まで見送りに来てくれた。
そして、私をそっと抱きしめてくれた。
「大丈夫よ。リアのこときっと認めてもらえるわ。知り合いにも頼んでおいたから。」
「ありがとう。お母様。行ってきます。」
私は、優しいお母様に心配をかけないように、緊張を隠して笑顔で答えた。
お父様が先に馬車に乗って、私を引き寄せてくれた。
(私には、お父様、お母様。そして何よりハオルちゃんがついている。大丈夫。)
自分に言い聞かせ、魔導協会に向かった。
適性検査を受けてからそう何日もたたないうちにまたここに来ることになるなんて・・・
「よく来てくれたね。グランツ公爵。」
そう言って声をかけてきた人は、なんと魔導協会トップ。
魔導協会の人たちは、みんな黒いローブを着ている。
宮廷魔導士のセレスティン様だと名乗ってくれた。
お父様も知り合いなのか、表情を少し緩めて話している。
聞いたところによるとお父様は水魔法の第一人者として、この魔導協会にもよく顔を出すらしい。
「まさか、グランツ公爵のお嬢さんが新種の魔法保持者なんて、今日は不謹慎ながらわくわくしているんだよ。」
そんなことを言いながら、私を好奇心に満ちた目で見つめてくる。
「うちの娘はまだ9歳だ。そう人目には触れさせたくないのだがな。悪いようにはしないでくれよ。」
お父様は苦笑いをしている。
魔導協会の人はみんな魔法に関しては、底抜けにのめり込む気質があるらしい。
(あまりお近づきにはなりたくないな・・・・)
そうしているうちに、魔導協会以外の人たちも集まり始めた。
国の偉い人たちも集まるようだ。
(なんか怖いな。いったい何人集まるんだろう?)
私が緊張から両手を握り締めていると、お父様が私の背中にそっと手を当ててくれた。
「大丈夫だから。私もついている。」
そう言って安心させてくれる。
私もこうなったら、やるしかない。
目をつぶり、息を吐いた。
「今日は、ヴェルデリア・フォン・グランツの魔法について集まってもらった。」
とうとう始まった。
私の魔法が今まで発見されていなかった魔法だったこと。
魔法水晶が緑に光ったことから、緑の魔法という名称にしたこと。
国の監視下に置かれることが告げられた。
今日は、この緑の魔法がどのように使われるのか報告する場ということで集められた。
「ヴェルデリア嬢。そなたは先日自宅敷地内で魔法の発動を行ったね。
それがどのような魔法なのか、まずは報告してほしい。」
セレスティン様にそう言われた。
緊張しながらも、私は自分の魔法に誇りをもって話す。
無価値ではないと分かってもらうために・・・
「私は、庭の植物に成長して欲しいと願いました。
すると、植物が大きくなり花が咲いたのです。」
事実を話すと・・・・
会場からは失笑が聞こえた。
「花が咲くって・・・・」
「そんな魔法、何の役にも立たないよな。」
小さな声でもしっかり聞こえてくる。
私は悲しくなって下を向いてしまった。
「みんな静かにしてくれ。新しい魔法なのだよ。すごいことなんだよ。」
セレスティン様が声を張り上げる。
「ヴェルデリア嬢。すまない。その魔法を見せてもらうことはできるかい?」
セレスティン様が申し訳なさそうに、私に頼んできた。
(やはりやるしかない。無価値だなんて言わせておけない!!)
「やってみます。それでは、庭園までご移動願えますか?」
そう言って、みんなに庭園に移動してもらった。
馬鹿にしたような顔の人が大半の中、魔導協会の人は好奇心に満ちた顔の人が多い。
私は、庭園でみんなに見えるようにポケットからハンカチにくるんだ小さな種を出した。
あまりに小さな種で、近くの人まで私が何を持っているのかまるで分らないようだった。
(花だけじゃ、また笑われる。)
(ちゃんと”役に立つ”ものを見せないと)
「これは、ある植物の種です。この種をここに埋めます。」
その種を土に軽く埋めた。
そうして、私は両手を組んだ。
ーーーーそうして願う。
(大きく育って、たくさん実をつけてね。)
私の体の奥から、じんわりと温かいものがあふれだした。
それが緑の光となって種を埋めたあたりに吸い込まれていく。
その瞬間。
土の中からはじけるように芽が出て、あっという間に茎をのばす。
そして、花が咲き、実をつけ・・・・・
ーーーー人々が驚いて声も出せないでいるうちに
緑の実が赤く染まって。
おいしそうなトマトの実がたくさん実った。
(リア・・・・お前は・・・・)
お父様が私の手を握る。
「すごい!」
「こんな一気に、詠唱もなしに・・・・」
魔導協会の誰かの声が聞こえる。
「・・・・収穫まで数か月かかる作物が、一瞬で・・・・・?」
「これがあれば・・・・食糧問題が・・・・・・」
その言葉を聞いて、やっと認めてもらえたと嬉しくなった。
ーーーーその途端。
ポン、ポン、ポン、ポン・・・・
庭の木々に色とりどりの花が咲きだした。
(あれ!?私何も願ってないのに・・・・)
「いや、待て。ちゃんと制御できるのか?」
誰もが驚きで、動くことができない。
「・・・・なるほど」
「これはただの成長促進ではない。
ーーーー生命操作の領域だ。」
セレスティン様が小さく独り言を漏らす。
「あ、ありがとう。ヴェルデリア嬢。
この魔法については、初めての魔法ゆえ、王にも報告をする。
また、魔導協会に今後も変わったことがあれば報告することを義務とさせていただく。」
(あ~あ。王様にまで報告されるのか。
認められるだけでよかったのに・・・・
ただの呼び出しじゃなかったんだ。
これは
ーーーー私の人生を左右する”審査”だったんだ。)
『大丈夫だよ。私もついてるよ。何かあったら私が守ってあげるよ。』
ハオルちゃんが頼もしいことを言ってくれる。
(なんか頑張ったからかな?ちょっと疲れたな?)
そんな私をーーーー
離れたところから、睨みつける人が・・・・
そして、人知れず
闇の魔力を宿したその瞳が冷たく細められた。




