66株目 エドアルト王子様への告白
お父様から王宮に連絡を取ってもらったのが、10日前。
なかなか返事が来なかった。
そして、返事が来てまた更に10日後。
やっと、今日話をするために王宮に出向くことになった。
自分の気持ちを伝えるなんて・・・・
緊張から、何も考えることができずに王宮まで来てしまった。
入り口には側近のルーカス様が待っていてくれた。
「よく来てくださいました。
なかなか時間が取れず、遅くなってしまい申し訳ありませんでした。」
ルーカス様もなぜかいつもと違い緊張気味にぎこちなく話す。
「こちらこそ。
お忙しいのにこのような機会を取っていただき、ありがとうございます。」
私も、さらに緊張が増してしまった。
そして、私は応接間に案内された。
私は、誰もいない部屋でエドアルト王子様を待つことになった。
(今まで、待っていてくれることはあっても待たされることはなかったな。)
今まですごく大切にされていたんだと気づいた。
緊張して待つ時間は長く感じる。
そうして、しばらく待っていると・・・
「あ~。遅くなってすまない。」
久しぶりに会う、エドアルト王子様だった。
なんかよそよそしく、いつもの笑顔も見られない。
(もしかしたら・・・・私、もう・・・・婚約者から外されたのかな・・・?)
そう思ったら急に寂しくなってきた。
(どうしよう?気持ちを伝えようと思ってきたけど・・・もう手遅れ・・・?)
私が、何も答えられずにいたら、エドアルト王子様の表情がどんどん曇ってくる。
椅子に座ろうと一歩踏み出した王子様の体が揺れる。
ーーーー次の瞬間。
王子様の体から力が抜けて倒れていった。
「キャーーーーーーッ」
驚いて、悲鳴を上げてしまった。
その声に、扉が開いて側近のルーカス様たちが入ってきた。
「どうし・・・エド!!大丈夫か?」
王子様は、寝室へと運ばれていった。
何もできない私は、この部屋で待つように言われた。
そうして、ルーカス様が戻ってくると、私を見て静かに話をしてくれた。
「ーーーーこんなこと言うと、後でエドに叱られてしまうな。
実はエドは、ヴェルデリア嬢に選ばれる自信をなくしていたんだ。
だからパーティーの日からとにかく落ち込んでいた。
その不安を隠すようにがむしゃらに毎日仕事に打ち込んでいた。
夜も眠れなくて無理ばかりして・・・
だから、今日緊張もあって、倒れてしまったんだと思う。」
視線を下に向けたまま、友人として王子様のことを思っているような表情だ。
「今日は、私の気持ちが決まったから会いに来たんです。
私も、顔を見た途端、自分に自信がなくなって・・・・
お互い、何も言っていないのに、
同じようなこと考えていたんですね。」
私も、苦笑いで答えた。
「あ!!
私、今日ポーションをもってきていたんです。
目を覚まされたら飲んでいただき、お話させていただいてもいいですか?」
最近、いつも使えるようにと持っているポーションの存在を思い出した。
「いつまでも、逃げていても結論は変わらないだろうな?
友人として頼む。
お手柔らかにお願いする。」
(逃げるって、今までも逃げていたの?どうして?)
分からないながらも、優しくお話しすると約束した。
そうしてルーカス様と一緒に、目を覚ましたエドアルト王子様の寝室に向かった。
確かに、エドアルト王子様はパーティーの時よりも痩せて、青白い顔をしていた。
寝不足だとすぐわかる目の下のクマ。
(どうして、そんなに無理をしたの?)
「面目ないな。こんな姿を見せてしまって。」
悲しそうな顔で唇をかみしめる。
「誰でも具合の悪いときは、同じです。
今はとにかく私の作ったポーションを飲んでください。
毒見は必要ですか?」
私が尋ねると、王子様は慌てて答えた。
「そんなの必要ないよ。いただいてもかまわないのかい?」
私はうなずいた後、ルーカス様に手伝っていただき、ポーションを飲んでいただいた。
すると、みるみる王子様の顔色がよくなっていった。
「ヴェルデリア嬢のポーションはすごいな!!
飲んでみて実感したよ。
貴重なポーションをもらってしまって・・・
今度、何かお礼をしなければな。」
「あの~。それでしたらーーー
私のこと、前みたいに”ヴェル”って呼んでもらえませんか?」
私は、思い切ってお願いすることにした。
「君は、嫌じゃないのか?
ちゃんとした婚約者でもないのに・・・」
王子様が視線をそらしてしまう。
「寂しいんです。
”ヴェル”って呼んでもらえなくなってから。
距離を置くって言われてから、泣くほど悲しかったんです。
家に帰ってからも・・・涙が止まりませんでした。
ーーーだから
私、気付いたんです。
私が、この世で一番お慕いしているのは、エド・・」
「ちょっと待ってくれないか?
今、言われていることが信じられない!?
もし、間違いでなければ・・・・私から言うべきだから。」
王子様が、慌てて私の話を遮った。
王子様は、姿勢を正して心を落ち着けるように深呼吸をした。
気が付いたら、もうこの部屋には私たち二人きりになっていた。
「君のこと、ヴェルって呼んでいいの?
これからもずっとだよ。
今、君がうなずいてしまったら
ーーーもう、後戻りはさせてあげられないよ。
それでもいいの?」
王子様は、ちょっと自信がなさそうに・・・
だけど、私の意思を確認するように首をかしげた。
「はい。ずっとヴェルって呼んでほしいです。
ーーーエド様。」
私が、思い切ってそう言うと・・・・・
エド様は、無言で下を向いてしまった。
しばらくそうしていると、静かに顔を上げ私の目を見つめた。
「ヴェル。ありがとう。
今までで一番うれしい言葉だ。
明日、公爵家に正式に婚約を申し込みに行く。
君が私を選んでくれるのならーーー
誰かに決められたものでなく。
私の意志で君を選びたい!」
「はい。お待ちしています。エド様。」
今日、行動してよかった。
ちゃんと私の気持ちが伝わった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
完結まであと5話となってしまいました。
最後までお楽しみいただけると嬉しいです。




