61株目 パーティー終盤
そうしているうちにレオン様とメアリー様が話に来てくださった。
「ヴェルデリア様。
もうお体は大丈夫ですか?」
メアリー様は心配そうに私を見つめてきた。
「ご心配をおかけしました。
お医者様にも日常生活に戻って構わないとお墨付きをいただきました。
それよりもメアリー様もご婚約おめでとうございます。
とても幸せそうですね。
私もうれしいです。」
私がそう話すと、メアリー様は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにレオン様を見つめる。
「ヴェルデリア嬢。
急にこのようなことになってしまい、護衛の任を離れることお許し願いたい。
今までありがとうございました。」
レオン様は、真面目に謝罪をしてくるものだから、私の方が慌ててしまう。
「こちらこそ。
今まで、大変お世話になりました。
私が今日まで無事でいられたのも護衛を担当してくださっていたお二人のおかげです。
これからはメアリー様とお幸せに。」
(あ~。好きな人と一緒にいられるっていいな~~~)
私はなんとなしに、隣のエドアルト王子様を見てしまった。
王子様は今日は、私のエスコート役としてずっとついていてくれる。
次には、オルフェウス先生が髪の毛をきちんとセットしている貴重な姿で現れた。
「やあ。リア嬢。本当に君(の魔法)はすごいね。
私も君の婚約者に立候補しようかな?
一生君(の魔法)を大切にすると誓うよ。」
いきなりのプロポーズのような言葉に私も驚いてしまう。
「オルフェウス殿。
そう言う話は後で正式に公爵に申し出てほしい。
それに、まだ私が婚約者候補だよ。」
王子様は、さりげなくオルフェウス先生から私を遠ざけてくれた。
「ーーーヴェルデリア嬢。
少し話してもかまいませんか?」
なんと、次に声をかけてきたのは・・・・
同じクラスのディート様だった。
ディート様の方から好意的に話しかけてきてくれたのは、初めてかもしれない。
そのくらい接点がないはずなのに・・・
ディート様は、少し恥ずかしそうに視線を下に向けた。
「私は、君の魔法を・・・その・・・
誤解していた。
君の魔法は素晴らしい。
君はもっと素晴らしい。
あ!いや。
とにかく、今までひどい態度で申し訳なかった。
これからは、もっと
もっと仲良くしてもらえたら・・・・」
もう言葉が続かずに顔が下を向く。
その耳が真っ赤になっていたが、もちろんリアは気づかない。
「もちろんです。
これからもよろしくお願いします!」
私は、嬉しくなって笑顔でディート様に答えた。
そうして、パーティーも終盤。
今まで、エスコート役に徹してくれていたエドアルト王子様が私の前に立ち、神妙な顔をして私を見つめた。
「ヴェルデリア嬢。
もうパーティーも終盤となる。
私とも二人で話す時間をいただけないかな?」
まるで、懇願するかのような顔で私を見る。
「もちろん構いません。」
私も、緊張して答えた。
「では、庭園に出てゆっくり話そう。」
そう言って、誰もいないガゼボに向かって無言で歩いた。
そうして、二人で座った後
拳を強く握り、決意を固めたように話し出した。
「ヴェルデリア嬢。
ーーーまだ婚約者候補ではあるが・・・・
君が選びやすいように明日からは・・・・
ーーー君との距離を少し置きたいと思う。
実は、カイル殿からヴェルデリア嬢との婚約の申し出も出ている。
また、オスト国のセシル殿下からも手紙を預かっている。
これから、もっと君の周りにはそう言う申し出が増えていくと思われる。
でも、君が困らないように、私の婚約者候補という立場を残している。
君が、誰がいいか決めたらーーー
その時は、伝えてほしい。
君の幸せのために、君が選んだ人を・・・・」
王子様は、絞り出すようにゆっくりと慎重に私に伝える。
私の心は、さっきから大きく震えているのに・・・・
何も言えずにいる。
「ヴェル。
今だけは、まだ一番近くにいるものとして、そう呼ばせてほしい。
ヴェル・・・・
ーーーー最後に君に呼んでほしい。
”エド”と」
王子様は、そっと私の手を取った。
心配そうな、それでいて無理して優しく微笑むように私を見て。
私は、王子様の”最後” という言葉が・・・・
あまりにも、悲しくて・・・・
涙がこみあげてきてしまった。
ーーーーーそれでも、涙がこぼれないうちに
言わなくちゃ。
言いたい。
「ーーーーうっ・・・・
エド・・・・さま・・・・・」
やっと言った途端。
涙が次から次へとこぼれてしまった。
もう、何も言えない。
私は、しばらく静かに涙を流した後
こっそり呼んでいただいた馬車に乗り、王宮を後にした。




