60株目 討伐成功を祝うパーティー
「信じたくはないが、異常は見当たらない。
今日から普通の生活に戻してもかまわないでしょう。」
私は、無事お医者様から普通の生活に戻ってもよいというお許しを得た。
ただし、あと一か月はあまり無理しないことを約束させられた。
そして、今日はとうとう討伐を祝うパーティー当日だ。
私にとって、久しぶりのパーティーだった。
今日はエドアルト王子様から贈っていただいたエメラルドグリーンの光沢のあるドレスを着た。
その上、エドアルト王子様は、私を屋敷まで迎えに来てくださった。
王子様は、私を見た途端。
一瞬目を丸くした後、動きを止めてしまった。
(何か、おかしいのかしら?)
私は、心配になって胸元に手を当てた。
すると、我に返った王子様が慌てたように話す。
「ーー思った通りだ。
君にはやはり、緑色のドレスが似合っている。
とてもきれいだよ。ヴェルデリア嬢。
今日は、正式な婚約者候補として、エスコートさせていただく。
よろしく頼む。」
王子様は、少し緊張をはらんだ表情をしながらも、私に手を差し出した。
私も、緊張しながらもそっと手を添えて馬車に乗せていただいた。
馬車の中では、王子様が今日のパーティーの流れを教えてくださった。
そうして、私とエドアルト王子様が王宮のパーティー会場についた。
会場には、今回の討伐の関係者とその家族が集まっていた。
きらびやかな装飾に色とりどりのドレス。
お祝いということで、入り口付近でもみんな楽しそうに笑顔で話している。
王子様にエスコートされ、会場に入った途端ーーー。
それまで、ワイワイと盛り上がっていた会場が一気に静かになった。
一瞬の静寂の後ーーー
わあ~っという歓声が広がり、みんなの視線を一斉に浴びた。
「聖女様だ。
ご回復されたのですね。」
「さすが聖女様だ。
美しい。」
様々な声が飛び交った。
そうして、皆さんの前を通り、王様のいる前まで進む。
「まずは、お礼を申したい。
この度は大変困難な討伐にもかかわらず、無事成功を果たせたのはーー
ヴェルデリア嬢の功績によるところが多分にある。
本当に素晴らしいポーションであった。
そこで、そなたをこの国の聖女として認定したい。」
王がそう言った途端。
「聖女様!ありがとうございます!!」
会場のいたるところからそんな声が聞こえてきた。
「しかしながらーーーー
ヴェルデリア嬢には取り返しもつかないほど、大きな犠牲を払わせてしまった。
本当に申し訳なかった。」
王様がそう言って、おもむろに立ち上がって私に頭を下げた。
「ひゅっ」
会場にいる人たちが驚きに息をのむ。
「そんな!
頭をお上げください。
今回のことは国の一大事でした。
それも、いうなれば私が作った植物が原因です。
私の方ですべて分かったうえで行ったことです。
後悔はありません!」
私がそう言うと、会場のいたるところからため息が漏れる。
「ご自分を犠牲にしてまで・・・・
何というお方だ!」
「本当に頭が上がらない。
君のことをこれからは国の聖女として、一番に尊重したい。
その上で、今後は二度と犠牲を払うようなことをさせないと誓う。」
王様は、周りを見渡し、皆に知らせるようにゆっくり話した。
「さて、そこで今回いくつか決まったことを発表する。
まず、討伐の功労者としてカイン・フォン・グラーフだが、本人たっての希望により次の褒賞を与える。
一つ、今後ヴェルデリア嬢の専属護衛として一生仕えることとする。
一つ、カイル・フォン・ハオル・グラーフと戒名することとする。」
カイル様が王の前に立ち、手を胸に当てて聞いている。
(名前にハオルを入れるなんて、カイル様そんなこと考えていたのね。)
「次に、今日まで婚約者候補として皆の先頭に立って行動してくれていたメアリー嬢だが・・・
諸事情により本日をもって、その任を解く。
こちらからの申し出であるので、次の婚約者としてレオンハルト・フォン・シュバルツ殿を紹介し、了承を得た。
よって、二人の婚約をここに発表しよう。」
その途端。
レオンハルト様とメアリー様が二人そろって神妙な顔をして頭を下げた。
(レオン様、メアリー様。
本当によかったですね。)
私も、嬉しさに表情がゆるんでしまった。
しかし、次の瞬間。
「ということで、自然とエドアルトの婚約者候補はヴェルデリア嬢一人となる。
つまり、ヴェルデリア嬢は婚約者候補から婚約者という立場になる。」
王様がそう宣言したところで、エドアルト王子がすぐに前に出た。
「そのことで、私の方から一つ提案がある。
今回大きな犠牲を強いてしまったヴェルデリア嬢には、誰よりも幸せになる権利が与えられてもいいのではないだろうか?
それは、こちらから決められた立場として、私の婚約者とするのではなく、
ーーーヴェルデリア嬢の婚約者候補の一人が私という立場で、
全ては選ぶ権利をヴェルデリア嬢にゆだねたいと思う。
誰と婚約するのか決めるのはヴェルデリア嬢だ!
もし・・・
ーーー私が選ばれなくても・・・とがめることはしない。」
王子様は、苦渋の決断をしたような表情で静かに話した。
会場にいる人たちは、驚きに目を丸くしたまま私を見つめている。
「分かりました。ご配慮ありがとうございます。」
私も、静かに頭を下げた。
(・・・・でも、本当はすごく寂しい。)
「報告が長くなってしまって申し訳ない。
皆、今回の討伐ご苦労であった。
皆のおかげで、本国の危機は完全に脱することができた。
今日はその祝いのパーティーである。
それぞれ思う存分楽しんでくれ!」
王のその言葉を皮切りに会場には音楽が流れ、にぎやかな話し声が聞こえだした。
「ヴェルデリア嬢。
私はあなたのポーションに救われました。
本当にありがとうございます。
あなたの魔法は唯一無二の素晴らしい魔法です。」
騎士団の中から長身の元気な騎士の方から声をかけられた。
「私もです。
あの生き物にやられたときは死を覚悟しました。
それなのに今こうして生きていられるのは本当にあなたのおかげです。」
魔術師団の人たちからも感謝の言葉をいただく。
私は、その後もたくさんの人たちから感謝の言葉をいただいた。
寿命という代償はあったけれど・・・
この国を救えたのだと今日改めて感じることができた。
ハオルちゃん!
私、後悔していないよ。
ハオルちゃんも今日は喜んでくれているでしょう。
植物魔法は”唯一無二の素晴らしい魔法”だって認めてもらえたよ。




