54株目 絶対討伐します ~カイルside
リア嬢の瞼が閉じ、体から力が抜けていく・・・・
あ~嫌だ!
目の前で消えてしまいそうになるリア嬢を見るのが嫌だ。
何もできない自分が嫌だ。
そして、一番近くで見ていられないのが何より嫌だ。
手を握っているのはどうして自分ではないのだろうか?
それでも、私にはやらなければならないことが残っている。
リア嬢と約束したこと。
リア嬢がここまでしなければならない原因となった生き物を討伐すること。
そして、自分がどんな状態でも必ず帰ってきて、リア嬢を今度こそお守りすること。
そのためには、急がなければならない。
事前に計画されていたように、私たちはすぐに出発の準備を整える。
その間に、リア嬢が作り上げた大事なポーションをみんなで分けて持つ。
私ももちろん1本しっかりと持った。
「皆、頼んだぞ。
確実に討伐してほしい。
ヴェルデリア嬢に作ってもらったポーションを大事に使い、確実に!!
そして、誰も欠けることなく・・・
ーーーまた戻ってきてほしい。
よろしく頼む。」
王は、みんなと目を合わせ、鼓舞するようにあいさつした。
「必ずや成し遂げます!いざ!!!」
「はっ!」
王に挨拶をしたうえで、騎士団長を先頭に精鋭部隊、魔術師団とアイゼンシュタット公爵が目撃証言のあった場所に向かった。
~~~~~ ◇ ~~~~~
野営をしながら数日。
いきなりその時は来た。
狼のような風貌だが、その体は何倍も大きい。
その目は血に濡れたように赤くギラギラとしていて鋭い。
闘争本能なのか鋭くとがった牙をむき出し。
灰色だった毛は、赤黒く汚れ、怒りに逆立っている。
(このままではまずい!)
誰もが一瞬で悟った。
私たちは、野営のたびに話し合っていた作戦通りに動き出す。
冷静さを失ったら負けだ。
一人一人自分の決められた場所に散らばり、奴の視線を一か所に集めない。
まず私は、みんなの陰にそっと隠れた。
周りに視線を向けさせているうちに、リア嬢の作ったポーションを素早く飲み干す。
ゴッ!
まるで、体の奥に灯がともったかのように熱くなり、力が見る間にみなぎっていく。
(カイル様!頼みます。)
リア嬢の声が聞こえた気がした。
(ハオル様、必ずや私がやり遂げます。そして、これからはリア嬢を守り続けます。見ていてくださいね。)
ハオル様にも勝利を誓った。
すぐさま、私は皆の前に飛び出す。
周りの騎士たちも決して視線をそらさず、すぐにでも立ち向かえるように準備している。
その後ろには、魔術師たち。
一番後ろには、アイゼンシュタット公爵。
奴と目が合った。
私はすぐさま、奴に向かって飛び込んで刃をふるう。
奴も素早く右前方によけて跳んだ。
すかさず、火魔法の術者が準備していた炎の魔術を放つ。
顔の辺りにあたったがさすがにちょっとひるんだだけで首を振る。
そのすきにまた、私が奴をとらえ刃を横に一閃する。
奴も素早く、体をひねったため、一部しか切れなかった。
しかし、今まで聞いていたのは、いくら切ってもすぐに回復してしまうということだった。
それなのに、私の一太刀した切り傷からは血が流れ、回復する予兆すらなかった。
しかし、それで怒ったのか更にこちらに激しい憎悪を向けた顔をしてくる。
素早い動きで攻撃を受けて、血を流している団員もいる。
しかし、精鋭の騎士団員達は私を援護するように自分の持ち場をしっかり守ってくれている。
奴に攻撃され、少しでも傷を負った団員には、ポーションを飲んでもらう。
また、自力で飲めない場合には、近くの団員に飲ませてもらう。
(一人たりとも犠牲にするつもりはない。リア嬢が悲しむから・・・・)
土魔法の術者が連携して奴の周りの土を崩してすり鉢状にしていく。
さらに、移動しにくくなったところにまた火の魔術で攻撃を続ける。
奴が回復させようと一瞬足を止めたところでーーーー
私が一気に上から奴の体を串刺しにする。
ギラリとした目を向け、牙をむき出しにしたが・・・・
刃を抜いた瞬間、血が噴き出した。
苦しそうにもがく。
水魔法で一気に水圧のある水を体の一方に向ける。
よろけたところに私は、渾身の力で奴の体を斜めに刃を振り切った。
ギャオ~~~
奴の苦しそうな声が響き渡り、やがて倒れ込んだ。
何人もの団員がとどめの刃を次々と刺していった。
奴はもう起き上がる力も残っていないようで、血を流しながら荒い息遣いをしている。
そこに、アイゼンシュタット公爵が、闇の魔術をかける。
「闇の精霊よ。我に力を与え給えーーーーーー」
奴の激しい息遣いが、
ーーーーーやがて治まっていった。
「やったぞ!!!倒したんだ!!!」
わ~~~~っと歓声が上がる。
「まだ終わりではない!このままにはしておけない。
火魔法の術者はすぐに奴を葬るんだ!」
騎士団長の声に一斉に炎の魔術がかけられた。
ーーーーーそして
奴の体は跡形もなく消え去った。
後には、激しい争いの跡が残った。
そこを土魔法の術者がきれいにしていく。
そうして、私たちの討伐は成功を収めた。
「それにしても、カイル殿は強かったですね。」
団員たちに囲まれた。
「これは、私の力というよりは、リア嬢のポーションのおかげだよ。」
私が、そうしみじみと伝えた。
今までにないほどの力がみなぎってきた。
リア嬢にしっかり守られているようだった。
(どこまで行ってもあなたは・・・・・)
「このポーションは、本当にすごい!
私は、奴の牙を足に受け、もうだめかと思った。
それなのに、ポーションを飲んだらたちどころに治ってしまった。」
「討伐成功は、ヴェルデリア嬢のおかげだ。」
「本当にありがたい。
自分の身を犠牲にしてまで・・・・
彼女はこの国の聖女だ!」
「そうだ。聖女だ!この国を救ってくれたんだ。」
討伐に加わった人たちからどんどん声が上がっていった。




