38株目 学園に復帰しました
6か月もの長い間お休みしていた学園に復帰できる日が来た。
久しぶりすぎて、ドキドキしながら学園の門をくぐった。
学園の入り口が妙に騒がしい。
なんかいつもより注目されているような気もする。
「聖女様よ。」
「なんて美しい。」
(聖女様?どこに?)
私もきょろきょろと辺りを見回すが、みんなの視線が私に向いている。
(え!?どういうこと?)
私が混乱していた時
「やあ。学園復帰初日だね。おめでとう。もう体調はいいのかな?」
門をくぐった広場にエドアルト王子が待っていた。
「あ。ありがとうございます。どうして王子様が学園にいらしているのですか?」
不思議に思って聞いてみた。
「素晴らしい功績を残した聖女様の学園復帰だからね。
ヴェルデリア嬢を教室までエスコートしようと思って来たんだよ。
大切な婚約者候補様。」
なんと、王子様は私のためだけに学園にいらしたそうだ。
「お忙しいのに申し訳ありません。
それより、その聖女というのは私のことですか?」
初めて聞いた言葉に驚きを隠せない。
「もちろん君だよ。ヴェルデリア嬢。
まあ、教室まで歩きながら話そうか。」
王子様が腕を差し出す。
私は、初めてのことにどうしたらいいのか分からなかったが、応えないのも不敬になりそうなので、おずおずと手をのせた。
慣れないことに、恥ずかしさに顔が熱くなってくる。
みんなの顔を見ることもできず、視線が自然と下がってくる。
「ヴェルデリア嬢は本当にかわいい人だね。」
王子様は、私の表情を見ようとする。
「見ないでください。本当に恥ずかしいんです。」
そう言うと、更に胸の奥がどきんと高鳴った。
「まあいいよ。それで、君が聖女だという話なんだけどね。
今回のポーションを作るのにあたって、新種の植物のポーションということでどういった経緯があって出来たのか説明することになったんだ。
そのポーションを貴族でもない、病気の地方の誰にでも配ったこと。
新種の植物を作るためにヴェルデリア嬢の協力が必須だったこと。
作成に尽力したことによって体調を崩してしまったこと。
そんなことを発表したんだ。」
「そんな。私一人の功績ではないのに。」
私だけの手柄になってしまうのではないかと恐れてしまった。
「いや。全てはヴェルデリア嬢の功績だよ。
だって、ヴェルデリア嬢がいなければ成しえないことだったからね。」
「そういう部分もありますが、聖女というのはあまりにも・・・・」
私はなんといっていいのかもわからずに、言葉を続けられずにいた。
「それでも、君の犠牲のもとにあったことには変わりがない。
本当に申し訳なかった。
私にできることは、なんでもさせてもらいたい。」
王子は立ち止まり、私を悲痛な面持ちで見つめてくる。
「私が納得して行ったことです。
今のままで十分ですから。
今日はありがとうございます。」
教室の前につき、私は王子からそっと手を離そうとした。
「君は本当に・・・」
王子は、そう言って一度私の手をぎゅっと握ってからそっと離した。
教室に入ると、セシル王子が私を待っていた。
「リア嬢!会いたかったよ。
体調は元通りになったのかい?」
セシル王子は嬉しそうに私の近くまで来た。
「ご心配をおかけしました。
もう完全に元気になりました。
お見舞いにいらしていただき、ありがとうございました。」
私は、笑顔でお礼の言葉を伝えた。
「私の卒業まであと少し。
これからも仲良くしようね。
早速今日は一緒に昼食をとろう!
今日は、ずっと君と過ごしたいよ。」
ちょっと語弊のある言葉だけど、いい意味にとっておこう。
「ぜひ、ご一緒させてください。」
そして、お昼。
食堂に行く道すがらーーー
以前までとは違う、温かい視線が集まってくる。
そこに、ある女生徒が私に向かって速足で歩いてくる。
「ヴェルデリア様!」
「どうしましたか?」
私が戸惑いながら足を止めて答えた。
「君は?」
セシル王子も心配そうに私の前に出てくれた。
「私は、ミランダと申します。
突然失礼します。
私、地方の村に祖母がいるんです。
病気が流行って祖母もその病気にかかってしまって心配していたんです。
それを、ヴェルデリア様のポーションで治すことができたんです。
本当にありがとうございました。
地方の村の人みんな、感謝しているそうです。
あなたは、本当に聖女様です。」
両手を組み、私をキラキラと熱いまなざしで見つめてくる。
「みなさん、ご病気がよくなって嬉しいです。
でも、私一人で出来たことではありません。
私にできることをして手伝った一人ですので、聖女で・・・」
「いえ。みんな聖女様と呼ばせていただいています。
私にできることは何でもお手伝いいたします。」
そう、深々とお辞儀をして、みんなの中に戻っていった。
同じように、私に向かってキラキラな瞳を向けた生徒たちの中に・・・・・
なんか、今までとあまりに違いすぎて。
6か月いない間に、浦島太郎になった気分だった。




