32株目 メアリー様と再び
ボランティア体験から数か月後。
あの日からすっかり、みんなとは仲良くなれた。
私の魔法をしっかり知っているベル、ライベルト様、イアン様3人とはもう友達だ。
ボランティア体験の授業の講評もいただいた。
順位自体はないが、実質一位となるほどの高評価だった。
評価された点は、
まず、班の全員の協力があり、連携がとられたこと。
次に、実習地にとって大変役に立ったこと。
領地改革につながるほど、今後にも影響を与えたことが挙げられた。
もちろん。
オルフェウス先生にも、とても、とても興味を持っていただいた。
「すごいぞ。さすがヴェルデリア嬢。
また、様々な実験をしなければ・・・・
どんどんと思いつく。
忙しくなるぞ。」
興奮気味に早口でまくし立てた後ーーー
髪の毛をかき乱し、自分の思考に入っていった。
私たちは知らなかったがーーーー
その後に国の重鎮が集められ、品種改良された麦について報告されていたなんて・・・
~~~~~ ◇ ~~~~~
「寒い土地で採れる麦の種を作ってしまうなんて・・・・」
「植物の魔法とは、なんと素晴らしい。
私の領地にもぜひ来てもらいたい。」
「国としてもしっかり管理して・・・・」
好意的に受け取る人もいれば。
「また、生態系を崩すようなことを・・・・・
危険すぎる。
何も起きなければよいが・・・・・」
アイゼンシュタット公爵の声は誰にも届かなかった。
「全く、ヴェルデリア嬢は、私の予想の上を行ってくれる。
婚約者候補殿は目が離せないな。
ますます・・・・」
エドアルト王子も自分の考えに耽っていた。
~~~~~ ◇ ~~~~~
ある朝、学校の門をくぐると・・・・
メアリー様が木の陰からそっと前に出てきた。
(何だろう?あれからほとんど接触がなかったのに・・・・・?)
「ヴェルデリア様。少しよろしいでしょうか?」
メアリー様が一人でいるのも珍しい。
「何でしょうか?」
私が少し警戒しながら、足を止めた。
「今日のお昼ご一緒させていただけないでしょうか?
もちろん二人だけで・・・・
どうしても内密にお話したいことがあるのです。」
メアリー様が珍しく、心配そうに声を潜めている。
(悪意は感じられないわね。)
『大丈夫そうだよ。本当に一人みたい。
心配なら、カイル様にも一応伝えておくよ。』
最近ハオルちゃんはカイル様と意思疎通がスムースだ。
二人で結託して私がしようとすることを止めてくることもある。
過保護な保護者が二人になった気分。
ハオルちゃんにも確認が取れたため、私は了承して時間と場所を聞いた。
お昼になり、指定されたガゼボに赴く。
すると、メアリー様が本当に一人で昼食の準備をして待っていた。
「来てくれてうれしいわ。
本当に他意はないから一緒にお昼をいただきながらお話ししましょう。」
お昼をいただきながらたわいもない話をした。
食後の紅茶を飲み始めたころーーーー
メアリー様の表情が一瞬で引き締まる。
やっと、本題の話に入る雰囲気が感じられた。
「まずは、単刀直入に教えてもらえる?
ヴェルデリア様は、護衛のレオンハルト様とは親しいのかしら?」
恥ずかしいのか、ほほをほんのり赤く染めながらも、必死に聞こうとする。
「あ、あの。私の護衛をしてくださっているレオン様のことでしょうか?」
私が驚いて尋ねると・・・
「まあ。レオン様とお呼びしているのね・・・うらやま・・・
ん、んん。いえ、なんでもございませんわ。」
なんか言動が怪しすぎる。
(もしかして・・・・・・?)
「レオン様とは、本当に私につけていただいた護衛という関係だけです。
失礼を承知で申し上げさせていただきますが、
もしかしてメアリー様は、レオン様のこと・・」
仮にも私もメアリー様も王子様の婚約者候補という立場。
言っていいものかどうか悩んでしまった。
「誰にも聞かれないように、二人だけの場を設けたのです。
正直に申し上げて、私、レオンハルト様とは幼馴染です。
そして、心の中でだけお慕い申し上げておりました。
ですから、ヴェルデリア様とお二人で歩いているところをお見かけして、つい・・・」
メアリー様はその時のことを思い出したのか、視線を下げる。
「そうだったのですね。
ご安心ください。
確かに、レオン様は素敵な方だとは思いますが・・・
私たちの関係は護衛以上に親しいものではありません。」
私がきっぱりとそう言うと、メアリー様は心から安堵したように息を吐いた。
「それでは、今までの私の態度。
本当にお気に障るものだったかもしれません。
申し訳ございませんでした。」
なんとメアリー様は、頭を下げられた。
「い、いえ。大丈夫ですから。
頭をお上げください。」
私は、あわてて椅子から立ち上がってしまった。
「それなら、メアリー様はエドアルト王子様の婚約者候補としてのお立場はどうお考えですか。」
私は気になって聞いた。
「全くの政治的な婚約者候補です。
お父様にしか決定権がありませんから・・・・」
メアリー様は悲しそうに唇をかみしめた。
「何かご協力できることがあればよいのですが・・・」
私がそう言うと、メアリー様はまた驚きの表情を見せた。
「ふふ。ヴェルデリア様って本当に素敵な方でしたのね。
今までひどい対応ばかりでお願いするのも申し訳ないのですが、
よかったらお友達になっていただけませんか?」
メアリー様が笑顔を私に向けてきた。
「嬉しいです。
こちらこそよろしくお願いいたします。
何かご協力できることがあったらおっしゃってくださいね。」
私もうれしくてそう答えた。
そうして、私たちは敵対の立場から
仲の良い友達へと変わっていくのであった。




