20株目 カイル様の変化
私のポーションの件については持ち帰り、検討されることになった。
けがを治したあの日から変化したこと。
カイル様の私へ向ける表情。
そして、言葉。
「リア嬢、おはようございます。
もうそろそろ、護衛を再開できそうです。
やらせていただけないでしょうか。」
様子をうかがいに行くたびに、熱心にお願いされる。
「まだ、お医者様からも大事にするように言われてますよね。
完全によくなったらお願いしますから、もう少し安静にしてください。」
私も必死にお願いする。
せっかく優秀な騎士団員なのに、ここで無理をして故障したところが残っては困る。
「絶対私がお守りしますので、他の方には声をかけないでくださいね。
一生私が責任をもって守りますから・・・・・」
なんか、必死にお願いされる。
(そんな一生なんて、別に大切な仕事も出世もあるでしょうに・・・)
私は、あいまいに笑顔でうなずいた。
そうして、カイル様がけがをしてから1か月が経つ頃。
ようやく、お医者様から普段通りの生活を許されたカイル様。
「やっとです。ようやくリア嬢に恩返しできる立場に戻れそうです。
これからなまった体を元に戻すべく訓練をしっかり行い、すぐに戻りますから。」
そう言って、早速訓練に行こうと動き出した。
(どうしてそんなに必死に・・・・)
『きっと、リアちゃんに救われたから感謝しているんだよ。』
ハオルちゃんもカイル様のことを信頼しているようでよく姿を現す。
しかし、そう言った途端・・・・・・
「ん?」
カイル様の動きが止まり、ハオルちゃんのいる辺りを眺め始めた。
(えっ。また、眺めてる!?見えているの?)
「リア嬢。今誰かが話しかけませんでしたか?」
カイル様がそう聞くものだから、私はあわてて答えた。
「いえ。誰もいませんよ。」
カイル様は、不思議そうな顔をして辺りを見回した。
(ハオルちゃん、どうしよう?何か気づかれたのかな?)
『姿は見えないと思うんだけど、私の声は聞こえるのかもね。
カイル様、聞こえたら右手を上げてください。』
(やだ。ハオルちゃん、そんなこと・・・・)
しかし、カイル様は辺りを見回しながら、おずおずと右手を上げた。
「えっ。聞こえるの!?」
私が思わず、声を出してしまうと。
「やはり、誰かいるんですね。私には見えませんが、リア嬢には見える誰かが・・・」
カイル様は確信したように、私を見つめてきた。
「私は、リア嬢の護衛です。
時々あなたを見ていると、まるで誰かと話をしているような時があるんです。
きっとその方はリア嬢の味方なのでしょう。
その方と話をしているときのリア嬢の表情を見ていると分かります。」
カイル様は、今度はハオルちゃんがいる辺りを見つめて表情を緩めた。
『私は、リアちゃんと精霊契約をした植物の精霊ハオルだよ。
これからもリアちゃんを守っていく同志としてよろしくね。』
あまりにフレンドリーなハオルちゃんに驚きつつ、カイル様を見た。
「私はリア嬢に感謝してもしきれない恩があります。
これからもよろしくお願いします。」
見えないはずなのに律儀に頭を下げるカイル様。
「どうして、カイル様だけ声が聞こえるようになったのかな?」
私が不思議に思ってハオルちゃんに聞いた。
『もしかしたらだけど・・・・
リアちゃんが作った薬草を使ったでしょう。
私も一から作り方を教えたし・・・
その上、カイル様のけがが治るように祈りを込めたポーションを作ったでしょう。
その願いが入ったポーションだったからじゃないかな?』
「それじゃ、この前同じポーションを飲んだオルフェウス先生にも、同じように聞こえちゃわないかな?」
私が心配になって聞いた。
『カイル様のけがが治るように願ったんだから、カイル様だけのことだよ。
それに、私が絶対に認めないから大丈夫だよ。』
ハオルちゃんはオルフェウス先生が苦手なので絶対に認めないだろう。
「でも、カイル様。このことは誰にも言わないでくださいね。」
私は、心配になってカイル様を見た。
「リア嬢の嫌がることは絶対しませんから大丈夫です。」
カイル様が私の目をじっと見つめて話す。
こうして、私だけが話していたハオルちゃんと会話できる人が一人増えた。
私の絶対的な味方が増えた瞬間だった。




