2株目 どうやら転生したようです
目を覚ますと、そこは見たこともない天井。
緑の光に導かれるように視線をそっと向けるとーーー
そこにはまるで
「待っていたよ。」
ーーーそんな声が聞こえてくるような
窓辺に小さな鉢植えが。
(あれ?多肉ちゃん?)
(おかしいな?)
(ここ、うちじゃないし・・・)
(それに、私、死んじゃったはず?)
「ヴェルデリアお嬢様。お目覚めですか?よかった。心配しましたよ。」
見知らぬメイドのような恰好をした女性が声をかけてきた。
「ヴェルデリアって?誰?」
私が、小さい声で聞くと、
「ちょっとお待ちください。旦那様と奥様をお呼びしてきます。」
女性がなぜか大慌てで部屋を飛び出していった。
(私の声?なんか、違う?おかしい?)
のどに手を当てようとすると・・・
(何これ、手が小さい!私、小さくなったの?それとも・・・榊原 緑じゃないの?)
混乱しているうちに、部屋に入ってきた男の人と女の人。
そして、お医者様らしき人。
みんな私を「ヴェルデリア」って呼ぶ。
男の人と女の人は私のお父さんとお母さん。
そして、私、ヴェルデリアは病弱。
今回も高い熱を出し、何日もうなされながら寝込んでいたらしい。
どうりで体がバキバキと痛いはずだ。
汗もかいたらしい・・・
境遇は私と同じだけど
(でも、私ヴェルデリアじゃない。)
今は、混乱して、記憶があいまいなのだろうと言われた。
心配されながらも、一人にさせてもらった。
どうしようかと部屋を見回した時。
ーーーーぽっ
部屋の中の小さな鉢植えが緑に光ったように感じた。
ベッドから、そっと抜け出した。
(・・・・・あれ?こんなに軽く歩けるの?)
(息も苦しくない・・・・)
違和感を感じながらも、その鉢植えに近寄った。
そっと鉢植えを覗き込むとーーー
それは、多肉植物の中でも私の最も大好きな「ハオルチア」だった。
ぷっくりとした葉の部分の先に半透明の窓が光にあたってキラキラと輝いていた。
まるで、エメラルドの宝石のよう。
(美しい!!)
私がそう思った時、
ハオルチアは緑の光を点滅させ始めた。
まるで、嬉しいと喜んでいるかのように。
私は、部屋のハオルチアの鉢植え
ーーー通称「ハオルちゃん」に向かって話しかけた。
いつものように。
「ハオルちゃん!私どうなったの?
私ヴェルデリアっていう人になったの?
これからどうなるの?ハオルちゃん、助けて!」
私が、そう話しかけると・・・
ハオルチアがまぶしいほどの緑色に光りだした。
あまりのまぶしさに目をつぶる。
しばらくして、そっと目を開けるとーーー
そこには、小さな緑のハオルチアの冠をかぶったような女の子。
そう
まるで「ハオルちゃん」がそこに浮いていた。
「うそ。あなた、ハオルちゃん?」
私が、恐る恐る聞くと。
『緑ちゃん。
今ではヴェルデリアちゃんだね。
こんにちは。私に名前を付けてくれてありがとう。』
その女の子は、嬉しそうに答えてくれた。
いや、それより私の名前?
「えっ。お話しできるの?それに、私のこと知ってるの?」
私は、驚きのあまり、矢継ぎ早に話してしまう。
『もちろん。
緑ちゃんにはいつもお世話してもらってたくさんお話を聞かせてもらったからね。
でも、あっちでは、どうしてもお話しできなかったの。
こっちについてきて、名前を付けてもらったら話せるようになったんだよ。』
ハオルちゃんはうれしそうににこにこと話す。
「ついてきたって・・・・どういうこと?
私はやっぱり死んだの?
ここは、違うおうち?どうなってるの?」
不思議に思って訊ねると、
『緑ちゃんは死んじゃったんだ』
(・・・・そっか。私、本当に死んだんだ。)
(でもーーーまた、生きてる。)
私は、手をぎゅっと握った。
『でもね。離れたくなかったから光になってついてきちゃった。
緑ちゃんにあんなに大事にしてもらえたから・・・・・・・
普通の植物じゃなれないのに、植物の精霊になれたんだよ。
名前を付けてもらったから契約成立して、話せるようになったんだよ。』
ハオルちゃんは、私と話せてうれしいのか、頭の上からピンと花芽が伸びてきた。
(かわいい!!じゃなくて)
「ところで、こっちって?」
私は一番気になることを聞いた。
『この世界はね、みんな魔法が使えるんだよ。』
(えっ。理解が追い付かない。)
そうして、ハオルちゃんに教えてもらった。
私が、日本とは別の世界に転生したこと。
そして、この世界ではヴェルデリア・フォン・グランツ。
グランツ公爵家の長女。9歳だということ。
今まで、病弱だったけど、転生して、徐々に元気になっていくこと。
そして、家族のこと。
死んじゃったと思っていたけど、今度は、元気になってもう一度人生を楽しめるかも・・・
そう思ったらーー
今まで植物を大事に育ててきたからこそ
神様に与えていただいた時間かもしれないと思えた。
それに、
私には、これから強い味方。
ーーーハオルちゃんがいる。
「これからもお友達でいてね。」
私は、ハオルちゃんにそう伝えた。
『もちろんだよ。精霊契約したから、もう離れないよ。』
ハオルちゃんも嬉しそうに話してくれた。
私の新しい人生が始まる。
今までとはまるで違う人生。
でも、変わらないのはーーー
私の植物愛。
ーーーまさかそれが、この世界で”無価値”だと言われるなんて
この時の私は思いもしなかった・・・・
本日2話目です。
よろしくお願いします。




