1株目 病弱ですが、植物好きの私です
「お母さん、今日もこのご本を読んで。」
小さな女の子がベッドの中から隣のお母さんに声をかける。
「あなたは、本当にこの本が好きね。」
お母さんがほほえましそうに、女の子の頭をなでる。
「だって、この本の聖女様、この国を救ってくれたんでしょう?本当にあったお話なんだよね。」
女の子が本の表紙の女の人を指さして聞いている。
「そうよ。本当に大変な時にこの国を救ってくれたすごい人なんだよ。・・・・・・大変なものを、引き換えにしてね。」
「え?」
少女は首をかしげたが、母はすぐに微笑んだ。
「ほら、広場の真ん中に立っている石像。あれが、その聖女様だよ。」
「すごい人なんだよね。私もこの聖女様みたいになりたいな。ねえ、お母さん早くご本読んで。」
そう言って、母親は毎日の日課となった寝る前の本の読み聞かせを始めた。
「ーーーこのお話にはね、まだ続きがあるのよ。」
お母さんは、眠ってしまった娘にそっとキスをして部屋を後にした。
~~~~~ ◇ ~~~~~
私、榊原 緑は小さい頃から病弱で、家からあまり出られない生活をしていた。
外で遊べなくても、私の楽しみは植物を育てること。
特に好きなのは、多肉植物。
あのぷくぷくとした葉っぱ。
(あ~触りたい。)
家の中でも水やりを毎日しなくても育てやすいところが更に気に入っている。
私が、水もやりすぎないように管理したり、日光に当てる具合を検討したり・・・
気を付ければ気を付けるほど、なぜか次から次へと増えていく多肉ちゃん。
子株が増えたり、花芽がついたりするとうれしくなってつい話しかけてしまう。
(また、仲間が増えちゃったね。すごいね。)
(・・・・昨日まではなかったはずの芽が、また増えてる。)
それなのに、家族は
「まったく。また、鉢を増やすの?もう、置くところないじゃない。どうするのよ。」
なんて、怒ってる。
(どうしてこのかわいさが分かってもらえないかな?)
もう鉢がいっぱいで「狭いよ!」と言っている多肉ちゃんの声まで聞こえてくる。
(だって、私の一番の話し相手は、多肉ちゃんなんだよ。)
(みんな、いつも話を聞いてくれてありがとう。)
(大切に育てるからね。)
最近特に体調がよくない。
(あ~あ。また入院かな?)
(なんか、今回はかなり辛いなあ・・・・)
私は、17歳。
青春真っただ中のはずの時期に、病気が悪化した。
本当は、外に出て仲の良い友達を作りたかった。
友達と一緒に町を歩いて、ウィンドーショッピングや流行りのお店にも行ってみたかった。
何より、恋をしてみたかった・・・
それでもーーーーー
気になるのは、唯一の私の癒し。
(あの子たち、誰かに水・・・・ちゃんともらえるかな。)
(誰にも頼めないな~)
(あ~、もっと、一緒にいたかったな。)
(多肉ちゃん、ごめんね。)
大好きな多肉ちゃんたちの姿を思い浮かべながら・・・・
ーーー私の意識はゆっくりと沈んでいった。
~~~~~ ◇ ~~~~~
暗闇の中で、ふわりと一つの緑の光が揺れた気がした。
『ーーーーやっと、見つけた。大好きな緑ちゃん。』
そんな声がかすかに聞こえる。
(だれ?)
安らぐ声
(気持ちがいい・・・・)
そのうち、体の周りに温かい光が集まってきた。
まるで、やわらかいお布団に優しくくるまれているよう。
『大丈夫だよ。これからも一緒にいるよ。』
優しくささやくような声が聞こえる。
そっと、目を開けるとーーー
死んだはずの私は
ーーーー知らない天井と、窓辺に置かれた一鉢の植物を見ながら
目を覚ました・・・・・・・
本日より始めました。
本日あと1話投稿します。
よろしくお願いします。
あわせまして、
『地味令嬢のまま婚約破棄を狙ったら、正体を見抜いた王弟殿下に溺愛されました』
昨日本編完結しました。
もしよろしければ、そちらもご覧いただけると嬉しいです。




