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大人の階段

長瀬は明るく

「ううん、そんなことないよ」って優しく答えた。

長瀬が僕にまともに普通に直接話しをしてくれたのは、あの西高祭の混レク以来だった。


気が付けば、丹羽は三年になって原田真理子のことを好きになり先日会っている。長瀬も二年の終わりに当時クラスメイトだった内川に告白されて断っている。

僕は二年の時の「ニセ」の告白でなく、先日は本心で一宮高校の門前美穂に告白したばかりである。


曲りなりに「告白」したりされたりするってことは、いろいろ向き合わないといけない。

気が付けば、みんな中学生から進学した「ガキ」ではなく、少し大人の階段を昇り始めていたんだ。


今なら・・・

今なら、本当のことを長瀬に伝えられるって思った。

それは


・西高祭の混レクの時に長瀬とずっと一緒にいたいと思ったこと・・・

・一年生の由紀は大切な後輩だけど、好きなのは長瀬って気付いたこと・・・

・丹羽は長瀬のことを可愛いと言っていたから、僕が長瀬と仲良くなれば丹羽はきっと嫉妬するだろうと思ったこと・・・

・ローラースケート場では由紀から誘われたこと・・・

・あまりにも周りが盛り上がって西高祭が終わって由紀に「今までありがとう、元気でね」って終わりの言葉を言うことが出来なくなっていたってこと・・・

・でも、由紀が村瀬のことを好きになっているのが分かったから早く受験に専念したくて「あえて」振られることにしたってこと・・・

・その一方で西高祭後は長瀬から拒絶されていると思っていたこと・・・

・下足箱で長瀬が「あんな奴、チーちゃんにやったわ」って言ったの偶然聞いてしまって自分のことかもしれないって感じてしまったこと・・・


でもまったく、言葉を用意してなかったし、もう先程からビールを僕と丹羽でグイグイ空けていたからきちんと話せるかは自信がない。

でも、これが西高祭以来最初で最後のチャンスだった。間もなく、僕は京都に進学する。もう長瀬と会うことはこのままではない。


長瀬ももう仔犬から母犬のように成長しているから、僕のことを西高祭後に嫌いになったとしても話ぐらいなら聞いてくれるのではないかと期待した。


「あのさぁ・・・」

どこから話していいか少し迷ったけれど、意を決して長瀬に話し掛けた正にその時だった。

酔っていた丹羽がまたしても騒ぎ始めた。


「千寿もさぁ~、千寿も模試で出会った子に会おうって電話したんだよな~。

そして、同じクラスのモリクミのことも好きってずっと昨日言ってたよな~」


『お前、今それを言うか・・・』と思わず丹羽の首を絞めようかと思った。

ここで長瀬への思いを伝えてもなんかペラペラの薄い気持ちにしか聞こえないだろう。


長瀬の反応が気になった。

丹羽へのように「久美ちゃんのこと好きなの?久美ちゃんって良いところのお嬢様風だよね、同じクラブだから伝えといてあげようか」なんて言ってくれるのだろうか。

そんな感じならば「今はちょっと酔ってるから・・・京都に行く前に少し長瀬と改めて話し出来ないかな」って言えることが出来る。


すると長瀬が口を開いた。

長瀬から出てきた言葉は僕が思っていた期待していた言葉とはまったく違う、意外なものだった。

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