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舌好調

正確には長瀬とハタさんと増田さん。

なんか因縁があるメンバーだった。


正直言って戸惑った。長瀬は高二の西高祭が終わってから隣りの席に座ってもそれまでとは打って変わった態度になってしまい、まともに話すことが出来なくなった。そして、偶然下足箱でこの長瀬とハタさんと増田さんの三人がいて「あんな奴、チーちゃんにやったわ」って長瀬が言っていた場面で遭遇してみんなが押し黙ってしまった。

長瀬と関わるのはあれ以来である。


長瀬は丹羽を見付けると、ニコニコとこちらにやってきて座った。

長瀬と丹羽は三年連続で同じクラスだった、二年の時はこの二人はあまり話すこともなかったようだったけど三年になってからどうなったかは分からない。

ただ、丹羽は現役で早稲田に受かっているので「おめでとう」とか「凄いね」みたいに話し掛けやすいだろう。対照的に僕は早稲田も旧帝大も落ち、滑り止めの大学に行くことにしたからなんか肩身が狭く感じる。


そして、早稲田合格と原田真理子への失恋で二重の意味でハイ状態になっていた丹羽はこの時も()()調()だった。


なにを思ったのか、ペラペラと原田真理子への失恋話を始めた。もしかしたら、他の受験大学は落ちて奇跡のように早稲田だけ合格した丹羽なりの照れ隠しだったかもしれないけど。


丹羽と長瀬と原田真理子は三年生の時は同じクラスで、長瀬と原田真理子は同じ軟式テニス部。

二年の夏ごろに丹羽は長瀬が他の男によく声を掛けられて悔しがっていた、嫉妬してしていたかのようだった。

そして、西高祭の時に僕やハジたちが一年生女子と一緒にいたらやはり嫉妬していた。その様子を知って、本当は一年生の由紀でなく長瀬を好きだった僕は丹羽に長瀬への思いを伝えるべきか迷っていた。もっとも、その後は迷う必要がなかったことを長瀬から思い知らされたけど。


丹羽が失恋話をしていた時の長瀬の様子を僕は見ていた。

二年の秋にチーちゃんが僕に話し掛けてくるようになった時に僕のことを完全に拒否していた気がしたから、丹羽が原田真理子のことを話すとどういう反応をするのだろうって。同じように拒否反応でもするのだろうか。


すると、長瀬は僕が以前思っていたパピー(仔犬)のような目でなく、慈愛の籠ったような優しい感じの聖母かのような表情で

「真理子は可愛いよね、真理子に小南(原田の彼)君はもったいないって思ってたよ。もっと頑張ったら!!」

って丹羽を慰めるような感じだった。この時の長瀬は仔犬ではなくすっかり母犬のような風格すらあった。


これって・・・

西高祭が終わり、周りからの異常の盛り上がりで仕方なしに僕が由紀にあえて振られた時に、きっとこの噂はすぐにクラス中に広まるだろうけど、当時仲良くなっていたと思っていた長瀬はきっと「残念だったね、頑張れ~」みたいに言ってくれると思っていた。そうなれば「本当のことを受験が終わったら言うね」って伝えるつもりだった。


あの時、僕が想像というか期待していた長瀬の姿が丹羽の前にいる。

そして、ふと思った。この二人ってホントにただの「純粋な」友達だったのかなって。つい、昨日まで丹羽は長瀬のこと好きなんだろうなって思っていた。

だから、モリクミの話しは出来ても長瀬のことは丹羽がいたので言えなくなっていた。


この時、ふと今まで思っていた言葉が自然に丹羽と長瀬に出た、ずっと封印していた言葉だった。


「丹羽って・・・長瀬のことをホントは好きなんじゃないの?」

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