↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/101

囁くモリクミ

四月には三年生に進級し、いよいよ受験体制になっていく。

丹羽は今回も長瀬と同じクラスで僕は彼らとは違う男子12名、女子33名という典型的な文系クラスとなった。


夏も終わり、また西高祭のシーズンがやって来る。勿論、三年生なので学祭に参加することはない。ただ、勉強疲れで気分転換のため散歩兼ねて運動場を少し歩いていたら由紀もペコも応援で頑張っている。やっぱり西高祭の華は応援なんだなと改めて思う。彼女たちは今まさに学園生活をエンジョイしてるんだなって微笑ましく感じる。あれからもう一年経ったんだと去年の今頃がもう懐かしい。


なんて、思っていたらばったり渡り廊下でクラスメイトの盛田久美子(通称モリクミ)に会った。モリクミは名古屋の名門女子大学狙いで軟式テニス部だから長瀬と同じクラブである。

長瀬は小柄で少しおとなしいけれど元気いっぱいな感じで、モリクミは平均的な身長でテニスウエア姿が似合いそうなお嬢様風の可愛い感じで好感が持てる人だった。ただ、話したことはなかったけれど。


すると、モリクミから話し掛けてくれた。なんか、ちょうど一年前の長瀬のように仔犬のような綺麗な目をして。それが、とても印象的で記憶に残った。


それで、数日後に友達の清水俊夫の席の隣りの人が休んだので、そこに座ってみた。なぜなら、その席の前にモリクミが座っていたから。

すると、僕の頭の中のシナリオ通りにモリクミが振り返って話し掛けてきた。


一年前のこの頃、長瀬の席の隣りに座った時はこんな感じになると思っていた。7月頃から長瀬はよく話し掛けてくれたし、学校祭を機に僕からも話し掛けれるようになっていたから。

でも、あの時の長瀬はまるで拒絶していたかのようだった、いや「ようだった」ではなく拒絶だった。


席に着くや否やモリクミが振り返り、最初は勉強の質問でその後に少し雑談。

『これなんだよなぁ、去年長瀬の隣りの席に行った時にこんな風になると思ったんだけどなぁ』と一年前のことが走馬灯のように思い出される。


モリクミって喋り方がなんか可愛いって気が付いた。

質問してきて、最後にボソッと「百文字以内で述べよ」と囁(ササヤ)く。こんな言葉選択(チョイス)が出来る人が好きだから。

好きとか交際とかは大学生になってからで良いけど、モリクミみたいに可愛くて言葉センスに共感できる人がクラスにいるとちょっと楽しい。


なんて思っていたけど・・・

何故か、モリクミも12月前半頃から雲行きが変わり話し掛けて来ることが途絶えた。

それどころか、あの時の長瀬のように拒絶とまではいかないけれど距離を置かれてしまった感じがある。


受験生だから考えないようにしてたけど、まぁこういうところが冷たいと思われていたのかもしれない。

12月の中旬に模試を受けに行った時の会場が地元の小さな予備校の名英予備校だった。初めていく会場でそこの渡り廊下を歩いていた時にモリクミと初めて学校の渡り廊下で話した時のことをふと思い出してしまった。


長瀬はきっと僕と由紀の噂を聞いていただろうけど、今回のモリクミは全く心当たりがなかった。

『なんでだろう、なんでモリクミまでこんな感じになっちゃたんだろう』

少し凹みながら、教室で席に座る。

この日、一緒に模試を受けたのは朝倉(一浪後に京大)で僕の席の前、隣りは知らない高校の女の子。


気のせいか、回答用紙が配られてから試験開始までの時間が長い。

つい、隣りの席の子に小声で確認してしまった。


「なんか、待ち時間長くない?」


「そうやわな」


「えっ、三重の人?」


ここで試験官の「試験スタート」の号令が入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。