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クラス文集

あれから半年が過ぎた翌年の3月。

間もなく、高二も終わりいよいよ三年生となる。


長瀬自体はあれから高塚さんとも仲直りして、丹羽の言う所の「ゴキガキコンビ」は復活している。そして、相変わらず血の気軍団に長瀬は囲まれている。すっかり縁遠い存在になってしまった。


そして、血の気軍団を中心に最後にクラスの文集を作ろうという話になった。有志のみでなくあくまでクラス全体として。

正直言って僕らには面倒臭いだけの作業だった、各自A3サイズのスペースが与えられて各々が好きにページを彩る。


無難なのが修学旅行や西高祭の思い出とかで、僕も無難な範囲でチャチャっと書いて出しとした。

血の気軍団は言い出しっぺということもあって、皆しっかり書いている。


その中で僕の目を引いたのが長瀬のページだった。

みんなが無難なことや仲間内での内輪受けするような内容で書いていたが、長瀬のパートは本音が書いてあった。


【西高祭が終わって、それまで仲が良かった友達とうまくいかなくなって一人で落ち込んでいたのがこの頃でした。このクラスには嫌われている人が多いとかいろいろな悪い噂も他のクラスの人から聞いたこともあって】


そっかぁ、僕も少しは本音を書けば良かったのか。

≪西高祭が終わって、傷付く人がいないように実はずっと『嘘』を付いていた。でも、やっぱり自分には嘘を付けない、苦しかった。でも、まだ本当のことを言えるタイミングではない≫とか。


でも、書けないだろうな・・・

もし、書いたらヒロミたちが騒ぎ始め、由紀たちに伝わるかもしれない。

後出しじゃんけんなら誰でも勝てると思われるのも嫌だし、誰も傷付かないようにあの時「嘘」を言ったのだから蒸し返すこともないか。

長瀬以外に本心を伝える必要もないし。


そして、長瀬の箇所を何度も何度も見返した。


『ほら、これだよ、これ。これだって。だから・・・西高祭が終わってみんなは長瀬が明るくなったって言ってたけど、俺は長瀬は明るくなったのでなくて無理してるってずっと思ってた。あれは本当の長瀬でないって気付いてた・・・』


でも、だからと言って何も行動には移せなかった。長瀬になにを言っていいのかもう分からなくなっていたから。


そして、文集作成後に一部有志で打ち上げもしていた。

もちろん、僕や丹羽、ハジやミスターなどは不参加だった。受験生にはもうそんな余裕はない。特に僕は西高祭の後遺症で予定より出遅れたから尚更だった。


暫くして、風の噂を聞いた。

打ち上げが終わったあとに血の気軍団の数人が女の子に告白したって。

なんとなく、腑が落ちた。その為に彼らは西高祭のように皆で共同作業を作って盛り上げて、打ち上げも計画したんだなって。


血の気軍団の山村は西高祭が終わってから、やたら長瀬に声を掛けるようになっていた。

背も高くラグビー部の有力メンバーである。客観的に見れば小柄な長瀬にはぴったりかもしれない。


だから、山村が長瀬を狙っているのなら理解出来た。

ところが・・・

実際に長瀬に告白してきたのは同じ血の気軍団のメンバーで山村と仲の良いサッカー部の内川だった。

全然、クラスにいてそんな風に見えなかった。内川ならぬ案外内気な奴なのかなと思ったぐらい。

むしろ、内川は西高祭の頃までチーちゃんと仲が良かったはずだったので、その意味でも二重に意外だった。


そして、その噂によれば長瀬が内川を振ったとも。

きっと、西高祭が終わった後に、僕もこのように噂になっていたんだろうな。

振られたとはいえ、キチンと告白して振られた内川がちょっと羨ましい。

自分の気持ちをちゃんと伝えるって大変なことだけど、尊いことなんだなって初めて分かった。由紀のおかげと言えばおかげだけど。


長瀬に好きな人がいるのかどうかはもう分からない。

ただ、もうすっかり遠くに感じるようになっていた。半年前はみんなから彼女同然に思われていた由紀よりはるかに身近に感じていた人だったのに。


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