最初で最後の隣り合わせ
ハジとミスターには西高祭の頃からホントのことは言っていた。
僕が好きなのは長瀬だって。ただ、丹羽も長瀬が好きだと思うし西高祭が終わったら受験に専念するつもりだから今のままでいいと思っているし、長瀬と今までどんな会話があったかなどの細かいやり取りについては話していない。
長瀬から「まあまあカッコいんじゃん」と言われたことを言えば自慢しているようだし、西高祭の時にベタベタしていたことを言うと変態扱いされる気がして。
ハジとミスターは僕と長瀬の席を見て
「あの席ってまるでくっついているみたいだけど、誰の席?」
「あれは俺と長瀬・・・」
「へぇ、良かったね。うまくいってるじゃん」
「いや・・・一言も喋ってない・・・」
「なんでなの?馬鹿なの?」
「うん、そうだな・・・馬鹿だよな・・・俺」
急に長瀬が可哀そうになってきた。
先程の一時間の授業中はきっと長瀬は不快だったかもしれないなと思って。
あんなにパピー(仔犬)のように明るくキラキラしていた長瀬が長瀬でなくなっている。これは僕のせいなのかと思って。
そこで、意を決し席に戻り荷物を鞄に仕舞い込んで、席も元の位置に戻してから席を代わった血の気軍団の一人に声を掛けた。
「やっぱ、席戻るわ」
「え・・・いいじゃん、このままで」
「イヤ、もうこっちに戻るから」
しぶしぶ、そいつは長瀬の隣りに戻った。
それにしても、どうして長瀬はあんな態度になってしまったのだろう。
ホンの少し前までお互い顔を見れば声を掛けれるようになっていたのに。
しかも、一学期までは僕に唯一声を掛けてくれる人だったのに。
西高祭の時は気持ちが通じ合っていると思っていたのに。
長瀬と一緒に混レクをしていた時は皆から噂になっていた由紀とは比較にならないぐらいのトキメキと気持ちの高揚感があった。あれほど気持ちが高ぶったのは人生初めてで、隣りにいる長瀬の息遣いが聞こえ、こちらの心臓の鼓動が長瀬に腕越しの伝わっているかと思うと体中からアドレナリンが拡散し、全身が滾っていた。
仲良し度65点の由紀で噂になり、周りから言われたせいか本人もその気になっていた。それならば、あの時90点は行った長瀬ならそれこそ言葉はなくてももう長瀬にはこちらの気持ちが伝わっていてもおかしくない。
と言うことは・・・
そう言えば、長瀬は体育祭の前日に声を掛けたときに一般論としてだと思うけど
「私、あまり男の人とベタベタするの嫌だなぁ」と言っていた。
いくつかのパターンのシチュエーションを考えてみた。
① あの混レクの時の僕のベタベタしていたかのような態度が嫌だった
② 学校祭が終わってから僕が一年生の子と一緒にローラースケートをして、その後に告白したけど振られたって噂を聞いて一気に冷めた
③ ②の噂を聞いて一年生に好きな子がいながら、私にベタベタしてきたっていったいどういうことよと不信感を抱いた
④ 僕と仲良くなったと思っていたら、実は他に好きな人がいるとの噂を聞いて自己否定感とあんなヤツと仲が良いと思ったことへの自己嫌悪に襲われた。
⑤ 長瀬にいろんな男が寄ってきていたので、そちらに気持ちが行っていた
⑥ 上のうちのいろいろな組み合わせ
⑦ その他もろもろ・・・
実際のところは分からない、でも、この時の長瀬の表情と態度でなんか迷惑かなって思った。だから、真相を知りたいよりも長瀬の邪魔になりたくない、もうあんな沈んだ長瀬の顔を見るのが嫌だし辛いという気持ちになった。
すっかり心が折れてしまった。それは人生で初の経験だった。
だから、もうすごすごと長瀬と隣り合った席から離れることしか今は彼女のためにしてあげられることはないと思わざるを得なかった。




