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火の粉

長瀬とのことがもう昔日かのように感じ始め、もうすっかり秋となった10月のこと。

西高への通学は自転車だったので、いつものように自転車で自宅に向かっていた。

ミスターは西高の立地する中学出身でハジや丹羽は西区、僕は北区に住んでいたので途中からは一人で帰る。

すると、「先輩~」と聞き慣れたけど少し懐かしい声が。

振り返ると由紀やペコ達だった。


由紀とペコは同じ北区出身で由紀は僕の東隣りの中学、ペコは僕と由紀の中学の間を更に北上するので、この時点では帰る方向は同じだった。

西高祭が終わり、もう一か月ほど経っている。

予想通り、あれからハジは松田さんに告白したがダメで安藤ももちろん中瀬から振られている。


幸か不幸か由紀とはお互い「ニ番目か三番目ぐらい」の仲で決して嫌いになったわけではないので、こうしてばったり再会しても何事もなかったように以前のまま話すことは出来る。まともに好きになって振られたならどうして良いのか戸惑うけれど、自分の中ではあの西高祭のままでいることは出来る。


とは言え、心の準備もなく急に会っても共通の話題も今はないから少しどぎまぎはしたけど。

無難なところで由紀に

「あれから、村瀬とはうまくいってるの」と聞いてみた。正直、もう忘れていたけど。


すると由紀は


「村瀬先輩って・・・いい加減だもん」


最初はなにを言っているのか分からなかったけど、要は由紀には1学年上の実姉がいて村瀬とは同じ中学だから僕とローラースケートを一緒にしていた由紀の苗字を知った村瀬が、「もしかして北葉中学の松木さんの妹なの?」と声を掛けてきたとのこと。

その後に由紀はヒロミ達とも接点を持ったからヒロミを仲介役に村瀬と由紀は接触を持てただろうけど、そのままなにもなかったらしい。


まぁ、あの日に2回程村瀬からローラースケートを誘われたことで「この人は私に(異性として)興味がある」と思ってしまう由紀もどうかと思う。


そして、僕はみんなの前でまるで彼女寸前だった人を村瀬に取られた形になっている。本当は僕が長瀬のことを好きであることを知っているハジやミスター以外はそう言ってるんだろうな。

村瀬には正直不快ではある。まるで邪魔だけするために由紀にちょっかいを出したようで。せめて、本気で由紀のことを誘って欲しかった。村瀬が本気で好きなら『両想いになって良かったね』って由紀に言えるのに。


僕があの頃、丹羽に「俺も長瀬のことを可愛いと思ってる」とちゃんと言わなきゃと思ったように村瀬も僕に「あの子って同級生の妹なんだ、ちょっと誘うね」と言ってくれれば「どーぞどーぞ」と言ったのに。

もっとも、村瀬とは普段話をすることもないし、別に僕の所有物でもないからそれも変かもしれないか。

どちらにしても、もともと僕は由紀とは65点程度の仲だと思っていたし、由紀にとってもその程度だったんだろう。


ところで、この村瀬がいるグループの「血の気軍団」だが、西高祭が終わっても相変わらず受験体制に入ることなく部活など活発に動いている。

同じブロックの一年応援女子と交際しているものも数名したし、長瀬にも積極的に近付いているようだった。


逆に今まで仲が良かった、ちょっと派手目の田中千里(通称チーちゃん)グループとは仲違いしていたようだった。

もう、こちらとしては誰と誰が仲良いかなんてどうでも良い。そもそも僕たちとチーちゃん軍団は反りが合わない。

だから、血の気軍団とチーちゃん軍団がクラス内で険悪な雰囲気になっていても全く異次元の世界の話しぐらいにしか感じてなかった。

その火の粉が、この後に自分に掛かってくるとはこの頃は想像もしていなかった。

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