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緊迫

由紀に振られたというより、自分自身に嘘を付いて由紀に交際の申し込みをした事実はこれできれいさっぱり一年生と縁が切れたことですっきりした気分でもある反面自分の中でダメージとして蓄積し、ヒロミたちがきっとクラス内で盛って話しをするんだろうなと思うとちょっと落ち込む。


一つの救いは「好き」とか「付き合って下さい」って言葉を使わずに「グループ交際」ってワードを咄嗟に使ったこと。

もっとも、一年生たちは「告白してきたけど由紀が断った」と話しを切り取ってヒロミに伝え、その話しが広まっていくんだろうけど。


そんな時のこと。偶然、長瀬と廊下ですれ違った。長瀬とは一週間ほど前に西高祭の混レクで手を繋いだのがあれからもう数か月も経っているかのように長く感じる。

長瀬を見た瞬間に既にもう懐かしかった、なんかようやく気持ちが落ち着ける人に再会したかのようで。あのローラースケート場以来、落ち着かない日々が続いていた。


長瀬とは西高祭から気楽に話せるようになっている。

ところが・・・

この時の長瀬はいつものパピー(仔犬)のような感じでなく、今までと別人のように感じた。それは、もう二度と話し掛けてくれないかのように。

なんで、そう思ったかは分からない。

でも、ホンの一週間前とは雰囲気が変わってしまっていた、これが思い過ごしならば良いのだけど。


その数日後のこと。

長瀬とは学祭が終わり、通常授業が再開しても席が離れているので話しをする機会がなかった。

ちょうど、その頃席替えがあって僕は血の気軍団が多いあたりの席になった。

すると、血の気軍団の一人が席を代わって欲しいと言ってきた。

最初は面倒臭いなぁと思ったら、その代わってと言ってきた血の気軍団の隣りが長瀬であることに気が付いた。


これはチャンスかもしれないと思って、その申し出を受け入れた。

長瀬の席の左隣りに座る、隣りと言っても各々一人用の机で机と机の間は人が通れるぐらいのスペースはあるけど。

この4月から同じクラスだけど今まで近くの席になったことはなかったので教室では殆ど話したことはなかった。

だから、席が近くなれば西高祭をきっかけに顔を見れば話せるようになっていたのでいつもパピーのような感じの長瀬になるだろう、そう思っていた。


でも、気のせいか長瀬の雰囲気が今までとは違う。はしゃいでいるパピー(仔犬)ではなく、沈んだ感じになっている。

そこで、思い切って忘れ物をしたといった設定で長瀬に話し掛けてみた。

すると長瀬はビクッとした感じで

「あっ、・・・・びっくりした・・・え・・・なに?」

みたいな感じで決死隊が防御服で身を固めているかのように心を閉ざしていた。

こんな長瀬は初めてだった。あの混レクの時と全然違う。

受け入れられないのが分かったけれど、このまま続けてみた。


「あの・・・〇〇って持ってたかなって思って」


「え・・・ない」


「そう・・・あっ、ごめんね」


授業中とは言え全く会話が弾まないのが分かった。

隣りに長瀬がいるのに、全然楽しくない。それどころか、彼女はカメムシのように身を固く守っているまま。いったいどうなっているんだろう。僕がそばにいることが嫌なのかなと思えるほどに。


そして、僕はなにを思ったのか次の授業が始まる前に思い切って長瀬の席との間のスペースがない程に席を右隣に詰めてみた。

ホントに嫌なら長瀬が席を右にずらして距離を置くのか試してみたくて。

でも、長瀬はなにもせずこの緊迫した距離のままだった。

そして、相変わらず固まっているかのよう、西高祭の時の溌溂とした仔犬のような長瀬ではなかった。

受験に専念するはずだった僕はこの時間まったく授業が頭に入って来なかった。


そして、この緊迫した授業が終わったあとの休憩時間に僕はハジとミスターに声を掛けた。

僕と長瀬の席を見せて二人がどう感じるのか知りたくて。

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