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white lie

そして、由紀は由紀で借りてきた猫のようにおとなしくなり、照れ笑いのような表情をしている。

ここにいるのはドラネコと「借りてきた猫」である由紀、そして由紀と仲の良い先輩女子「野良犬」である。


まるで、野戦犬猫病院みたいな状況でどうして良いのかもう分からない。

でも、咄嗟に思った。

由紀はさっき逃げて行った。

こちらはそんなつもりは1%もなかったのだが、僕が告白すると思って。


そしたら、ここでわざと告白したら由紀は断るから、これで縁がきれいさっぱり無くなるじゃんって。じゃぁ、そうするか。変に本当のことを言う必要はない。


本当のこと・・・

それは、同じクラスに好きな人がいるって西高祭の初日に気が付いたこと。

そして、その思いは混レクを機に確信した・・・


その人は少し前に僕のことを『まぁまぁ、カッコいいじゃん』って彼女自身の友達の前で言ってくれて、西高祭を機に僕も可愛いなぁって思うようになっていたってこと・・・

ただ、その人のことは親友の丹羽も好きかもしれないから丹羽を刺激しないようにこれからは注意深く行動しなくちゃと思っていたこと・・・


このまま、由紀に「嘘」の告白をすれば由紀はこのまま満足はして、でも「お断り」するだろう。

本当のことを言ったら由紀はなんと思うだろう。

僕に今まで騙されていたと思うのだろうか。もしくは、振られることを気付いた僕が「逃げた」と思うのだろうか。

ならばもういい、誰も傷付くことのない方法を選ぼう、自分の気持ちさえ殺せばよいのだから。

「White Lie」、つまり「悪意のない嘘」。


そして、由紀に言った。

「このまま、ハジと松田さん含めてグループ交際出来ればと思っていたけど・・・」


そこまで言うと由紀は予想通り村瀬のことを暗示させるように


「ごめんね・・・好きな人が出来たから・・・」


「うん、分かった。気にしなくて良いからね、じゃぁ」


そう言ってようやく本当にその場を離れることが出来た。

でも・・・

これって後からドンドンダメージとなって自分を苦しめた。


人生初めての告白なのに、それは「嘘」だった・・・って。

俺って平気で「嘘」を言える人間なんだ・・・って。

なんか、とても心を汚されたような気持ちだった。

でも、その穢(ケガ)れは誰でもない、自分自身で選択をしてしまったことだった。

決して嫌いではないし、それまで由紀と仲良くしてたのは事実だけど僕がきちんと「告白」したかったのは体育祭の時にすぐ傍にいた長瀬なのに。


一番大切なことを一番伝えたい時にその人に伝えられないってこんなに辛くて悲しいことだとは思わなかった。

これは結構トラウマとなった。


ところで、由紀とはこれできっぱり縁が切れるだろうけど、ヒロミが由紀と急接近している。

しかも、ヒロミは拡声器みたいな存在だからこの「(嘘の)告白」がクラスに伝わるのは時間の問題だった。これはこれで鬱陶しい。


なんか、三流週刊誌みたいに周りが騒ぎ出すのが目に見えてるなぁと思うとちょっと気が重い。

でも、あの打ち上げの日から今まで僕に話すことがなかった人も気楽に話し掛けてくるようになってきていた。

「一年女子とそんな風になってたの」とか「勉強以外に興味ないと思ってた」とか。


だから、一番楽観的なシナリオは長瀬が今まで通りに僕を見掛けた時に

「えぇ~、聞いたよ~。残念だったね~」みたいに声を掛けてくれることだった。


そうすれば

「あれってさぁ~、実はみんなが勝手にそう言ってるだけで本当は違うんだよね~。もう受験に専念するけど・・・受験が終わったらみんなが知らない本当のことをこっそり教えるからあと1年半後を楽しみに待っててね」

って言える。

これは僕にとっての「告白までの時間稼ぎ」にもなる。

とにかく受験が終わるまでは長瀬であっても告白するつもりは元からないから。


ところが、その楽観的なシナリオはすぐに崩れたことが分かった。

むしろ、ほぼ最悪な形で事態は推移するのだが、この時はまったく予期出来なかった。


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