ペコと由紀
その女生徒が誰なのかは謎のままだったが、ブロック別発表はなんとか1年生を使ってなりそうだった。
そして、ブロック別に行って気が付いたけれど、そこにいた1年生女子は応援以外のメンバーなので結構暇そうだった。
『なんだ、マスコットには誰も来ないけどここには1年女子がいっぱい余ってるじゃん』
と思ったけれど、団長の柘植たちが意図的に女子を外しているかもしれないので気にしないことにはした。
ここで、問題が発生した。
もう、忘れていたけど僕は体育祭の実行委員のメンバーだった。メンバーが招集されていったところ体育祭の出場メンバーのチェックを誰かがしないといけない。
ところが、僕以外のメンバーは応援ばかりだったので事務作業をする時間はない。そこで、マスコットでもたいした役割がない僕がこのチェックをする破目になってしまった。
独りでやると結構膨大な量。
困ったなぁと思っていたところ、ふと閃いた。あの暇そうな一年女子に手伝ってもらえばいいじゃんって。
それは、体育祭が始まる四日前のことだった。
一年生のクラスに行って、先ずは廊下でたむろしていたおとなしそうな女の子に声を掛けた。
その子は杉浦美香、不二家のペコちゃん人形に似ていたので後に僕たちは彼女のことを「ペコ」と呼ぶようになる。
隣の席に座って貰って体育祭の各種目の出場選手を読み上げてもらって僕が生徒リストでチェックしていく。この当時で一学年違うと雰囲気が同級生と全然違う。雑談を交えながら作業していくと、これが思いの外に楽しい。
彼女は最初は長瀬もいる軟式テニス部にいたのだが練習がハードで辞めてしまったらしい。それを考えると長瀬って案外凄いのかなとも思ってしまう。
そして、なにより僕は柔道部なので後輩の女の子がいないけれど、こうして後輩の女の子と接することは初めてだったけど何故か気持ちが和む。
それまで、人生の不思議だったことの一つとして、大半の男が年下の女性と結婚するのは何故だろうと思っていたけどなんとなく分かった。
年下の女の子って見た目が普通以上なら生きてるだけで可愛いじゃんって。
約1時間ほど手伝ってもらってペコを解放し、少し休憩をした。
15分位して再開しようとして、廊下にいたペコの友達っぽい子を呼んだ。既にペコと作業をしており、先程ペコを解放したので友達同士できっと「あの先輩となにしてたの?」みたいな話にはもうなっているから話は早いだろう。その子は変に疑うこともなくニコニコと付いてきて先程と同じ作業を行う。
その子の名前は松木由紀、隣の中学校の出身だった。由紀はよく言えば誰とでも仲良くなれる人で先程の女子グループの中心メンバーっぽかった。で、悪く言うと八方美人風。八方美人は実はあんまり好きでないからきっと同級生だったら仲良くなることはなかっただろうけど、年下だとやっぱり可愛く感じる。
よく喋る子だから圭三と一緒にいた謎の女生徒のことを聞いたら同じ中学の先輩とのこと。つまり他のクラスの2年生ってことか。
由紀は割りとフランクな子なので、その謎の女生徒のことを聞くと
「お姉さん(由紀は彼女のことをそう呼んでいた)のこと好きなの?今度紹介するね」って言い始める。
ホントに紹介しかねないなぁと思って
「止めて、止めて」
と言いながら、『この子がキーパーソンだなぁ』とは感じた。
情報通だし、これからなにかあったらこの子経由だとなんでも早そうだなって。




