閉じた心
かつて、江利とお別れを決めて5分後に出会ったのが後の婚約者の知恵。
これは極端だけど、お別れしてから1か月程度できっかけを作ってもらったり出会ったりすることが多かった。
今回、涼葉とお別れを覚悟して2時間もしないうちに河内さんからきっかけを作って貰った。
でも、河内さんとは全く仲良くなることはなく寧ろ歴代最大級に話し掛けることが出来ない人になってしまった。
もともと、『この人と仲良かったらいくらでもケーキでも買ってあげるのにな』から始まって河内さんからも『奢ってよ』と言っていた。お互い似たようなことを思っていた訳だから今までのパターンなら圧倒的且つ絶対的にその程度までは行くはずなのに、それすらも満足に達成出来ないまま。
多分、高校のころから一気に交際話まで進展することに慣れ過ぎていて『普通』の関係作りが逆に分からなかった。
だから、ただでさえ『普通』の接し方が分からないのに、更に追い打ちをかけるようにプレゼントしたものをないがしろにされた現実を知らされ河内さんに『普通』にように装って接することは、なんとなく過去の『彼女』まで馬鹿にされた気がしたのと、シンプルにきっと迷惑な存在なんだろうなといろいろな思いでパレットの絵の具がぐちゃぐちゃに混ざったように心が淀む。
少なくとも、色が混ざったパレットではもう純白は存在しない。
もう、以前のように純粋に関心や興味を持って話すことは出来なくなった。
これはこれで器量が小さい男なのかと自己嫌悪にも繋がるけど。
あの豊科でのパートさん(エピソード44~45)は別に仲良くなかったのに、他の女子高生バイトと喋っていただけで内ゲバのような貼り紙を控室に貼るわ、歩いているところを後ろから車で追いかけるわで大変だった。
もし、僕が河内さんのような態度で豊科の人に接したらどうなったんだろう。
もし、あの豊科の人がお昼ご飯を作ってくれて、アトムの寿司に飽きてきたから助かるなと思ってその好意に甘えているうちに仲良くなった女子高生と連日お昼に行くようになり冷蔵庫でそのお弁当を放置していてすっかり忘れてしまったなら。その一方で何事もなかったかのように話し掛けていたら・・・
このあたりは流石に河内さんは「一度でも誘ったことある人での仲良しランキング」で30位に入らないだけあるなぁとは思うけど。
逆にあの人にとって僕は「仲良くなったランキング」で何位ぐらいなんだろう。たった一度の1:2の食事会では確かにボソッと「廊下でよく会うようになって仲良くなった」と言ったのは聞き逃さなかったけど。
今回はどちらかと言うとこちらが心を閉ざしてしまったかもしれない。
でも、そうしないと逆に心が潰れてしまう。
高校の頃に仲良くなった人が急に心のシャッターを降ろしてきてのが分かった時に『なんで・・・』とは思ったけど心当たりはあった。
あの時はどうして良いか分からなかったけど、この時に少しあの人の気持ちが分かった。確かに自分からは何も言えないなって。もう、あれから40年ほど経ったけど。




