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決断

“ふ~ん、そう言うことか。でも一体この状況はどういうことなんだろうか”


なんか、考えれば考えるほど混乱してきた。

もし、江利が僕のことを『自分で探そうとした結婚相手』と思っているなら、なぜ見送ろうとしないのだろうか。

友達なら少し時間をずらしてもらえれば済むことなのに。


今から旅立とうとする結婚候補より重要な友達って果たしているのだろうか。

つまり、今から会う人は女友達でなく、その『自分で探そうとした結婚相手』なのだろうか。


あまり沈黙するわけにもいかないし、あまりアレコレ聞くには時間がなくなってきた。


「また、会いたいし」


何を言って良いか分からなくなった僕はとりあえずそう言った。

そのように言えば、自分から切るつもりはないよって意思表示にもなるかと思って。


「和歌山だもん、ゴールデンウィークに私帰るから・・・」


「そうだね」


ここで江利の顔がようやくいつもの表情になった。

こうして、僕達は四条大宮駅で別れた。


再びマンションに独りで戻った僕は、先程の会話を頭の中で反芻(ハンスウ)していた。


“わかんないなぁ、どういうことなんだろう”


ふと窓辺を見るとポツンとスーツが掛かっている、なにかとても物悲しかった。


“あぁ~あ、独りだよ独り”


そう心の中で呟きながら、なにやらとてつもない寂寥感が僕を襲った。

そうこうしているうちに出発時間が迫ってきた。

僕は最寄りのバス停である大宮松原から市バスで京都駅へ向かった。


そして、12時頃に京都駅の新幹線への改札口に着いた。

京都から和歌山なので本当なら阪急で四条大宮から梅田へ行って、そこから地下鉄に乗り換えて難波か天王寺に行って和歌山に行けば良いのだが、転勤なので京都~新大阪が新幹線、新大阪~和歌山まで特急「くろしお」でしかもグリーン車というお大名様のような移動だった。


新幹線のホームでは僕や他に異動する人達、そして見送ってくれる人が集まっていた。


「あれ、彼女は?」


先輩が本気なのか冗談なのか聞いてきた。


「イヤ、来ませんでした・・・」


いつもなら


「そんな人いませんよ~」

って答えるのだが、何故かその時は真面目にそう答えてしまった。


京都~新大阪は新幹線ならほんの10分ほどと至近距離。

席を温める間もなく新大阪で和歌山行きの「スーパーくろしお」に乗り換えた。


1989年まで「くろしお」は全列車が大阪ミナミの天王寺が始発駅であったが、この時は既に新大阪乗り入れが始まっており新幹線と和歌山の接続が大幅に改善されていた。

グリーン車にいた会社役員風の人がすっかり酔っぱらっていたようで車掌に


「オレは嬉しんだ、くろしおが新大阪まで乗り入れて。今まで和歌山は陸の孤島とバカにされてきたんだ・・・」


といつまでもしゃべっている。


“えっ、そんなとこに行くの。俺は・・・”


なんか和歌山に行くのが少し不安になってきた。

列車は天王寺を過ぎて和歌山までノンストップとなる。

堺・和泉府中までは都市圏であったが岸和田を越えるあたりから風景が一変してきた。


名古屋で18年過ごし、その後大学時代含めて京都に6年いたのでいわゆる都会しか知らなかった。

風景が田舎っぽくなってきたことが更に不安感を加速した。

そして、何故だがその時稲妻のように突然ある考えが浮かび決意を固めた。


『もう、江利とは会わない』


突然僕は心に決めた。

同じ京都にいても8月に揉めてから話すこともなくなったし、仲直りしてからも今日みたいに寂しい思いをさせられことがたまにあった。まして和歌山へと離れてしまったのできっとこれからもすれ違って行くだろう。


“それなら、もう会わない方がいいや”

そう決意を固めた時、列車は大阪と和歌山の県境である雄ノ山峠を越えて、その後紀の川を渡っていた。


新天地である和歌山まであと数分というところで江利と会わないことを決めたのだが、このことがあと数分後にとても重要な意味を持つことになることを、その時わかるはずもなかった。

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