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お見合い

思い返すと、涼葉が連絡を断とうとしているんだろうなと確信したのが9月1日の朝。

そして、その日の出勤時に3ヶ月ほどやり取りが無くなっていた河内さんからお弁当作ってよとの言葉が出た。


実は、今まで彼女と別れた直後に別の人と急接近することが結構多かった。


例えば、独身時代に京都から和歌山に転勤する日のこと。

取引先の代理店に1歳年下の江利(エリ)という女性が前年の5月に入社し、6月頃から一緒に食事に行くようになった。

その後の8月の大文字焼の日に複数で一緒に遊びに行ったのだが、その日にちょっと気まずい雰囲気になり、そのまま仕事以外のことで話しをしなくなっていた。

12月にその代理店に間違い電話をしたところ、何故か江利に大受けして

「また、遊びにいきましょ」

と言われ江利の誕生日の12月14日とクリスマスは一緒にいて結婚観とかお互い話すようになっていった。


そして、転勤の日。

この日は江利が引越しを手伝うことになっていたが、待ち合わせの四条大宮駅に現れた江利は引越作業に関わらずリクルートスーツのような恰好で普段あまりしない化粧もばっちりして表情は少し強張っていた。


“とても引越の手伝いに来る格好とは思えないなぁ、それに化粧もあまり似合わないなぁ。なんか就職活動してるみたい・・・”


少し躊躇していた僕に江利は宣告するかのように口を開いた。


「私、あと1時間ぐらいしか時間がないから。友達が神戸から来ることになったの」


今日の12時には当時の風習として転勤者には会社の有志が集まって見送ることになっている。てっきり一緒に引越作業や掃除をした後に一緒に京都駅まで来るものと思っていた。その数日前から膨大な引継ぎ作業で時間がなかったので深夜の23時に会うなど、一緒にいることが普通になっていたから。


“今ここでケンカしたらどういうことになるか分からないのだろうか?

友達なら少し時間をずらしてもらうだけで良いはずでは?”


そう感じたので思わず


『友達と会うなら汚れたらいけないし、あまり時間もないなら今日はもういいよ』

と言いそうになった。しかし、やはり思い直し何も言わなかった。

今ケンカすれば後味が悪くなり本当にダメになってしまうだろう。


引越作業も終わり、何もない部屋で二人きり。しかし少し江利の雰囲気は硬い。


「何もないけど・・・取り敢えず座る?」


そう話し掛けたところ


「サテンでも行こうさ」

そう答えてきた。


ものの10分程度で再び四条大宮駅に戻り、喫茶店に入った。


喫茶店に入り暫く雑談をしたいたのだが突然真理子が話し始めた。


「私ね、親に言われて11月後半の連休に休みを追加して和歌山に帰ったんだけど・・・」


「あぁ、そんなこと言ってたね」

この11月はまだ仲直り前だったので業務連絡で休むという意味だと思っていた。この時まで。


「お見合いしたんだ・・・・三人と」


「へぇ、そうだったんだ・・・・・」


僕は少しというか、かなりびっくりした。まったく予期していない言葉だったから。


「でも、・・・やっぱり、自分で探そうと決めたの!!」


江利はゆっくりだが毅然と言い切った。


僕は頭の中が混乱していた。しかし、同時に多次元方程式の答が解けた気がしてきた。


だから、殆ど仕事以外の話をしなくなっていた11月の後半の連休前に突然江利が実家のある和歌山に帰るって言って来たのか。


だから、帰ってきてから間もない頃に間違い電話をした僕に腹を立てるのでなく笑い転げて仲直りを提案してきたのか。


だから、仲直りのデートは江利の誕生日で結婚について色々聞いてきたのか。そして一緒にディズニーランドに行こうと言って、クリスマスイブも一緒にデートしていたのか。


つまり、12月からトントン拍子に接近したのは自然にそうなったのでなく、江利の計算通りだったのか。

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