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心の繋がり

2000年12月中旬


くるみを初めて車に乗せてディナーに向かう。

最初の予定ではロイヤルホストだったが、直前に中区の栄近辺の「シンガポール屋台料理の店 ホーカーズ」に行くことにした。


当時の名古屋は路上駐車にさほどうるさくないので近くの路上に車を停めて歩き出すのだが、小柄なくるみと一緒に歩くのが初めてと思えないほどしっくりくる。


「芽依ちゃんからさぁ・・・メールが来たんだ」


「なんて?」


「もう、うち達バイトに行かないって」


「うん、もう織り込み済みだから・・・別にいいよ」


「ホーカーズ」は名古屋には珍しいシンガポール料理の店で円卓のテーブルの左45度の位置にくるみが座っている。

くるみとは店の中でも先程と同様に違和感がまったくなく既に何回も遊びに来ているような雰囲気すらある。


元々、第一印象は美形だなだったし、バイトとしてもピンと来るものはあった。

今までは、それは仕事面だけでそう思っていたのだが本当は隠れ仲良しだったのだろうか。


それがデートと言えるものなのか、果たして500円分足らないバイト代の見返りなのかよく分からないまま店を出た。

店からくるみの家まで40分ほど掛かる。車の中で疑問を色々口にした。


「どうしてさ、今まであんなに反抗的だったの?」


「え・・・、言いたいことをなんでも言っていいと思っていたから・・・」


“何のこちゃ、よくわからんなぁ~”


「2年生になって暫くして店を辞めたじゃん、あれは何で?」


「松本さんのことがむかついたから。社員かもしれないけど、何か威張っている気がして嫌だった・・・」


「初めて会った時にさぁ、面接の時に・・・。一目でこの人は未来のエースだなと思っていたんだ・・。

なんかとても時間が掛かったけれど・・・、やっぱり、あの時の直感は正しいなと思っているんだ。

でも、ちょっと俺に反抗的だったじゃん。5月に戻ってくるときも言い合いになったし・・・

でも不思議とむかつくけど嫌いにはなれなかったんだ・・・。

だから・・・もしかして、よっぽど俺のこと嫌いか・・・

それとも・・・本当は心が通じ合っているのかなぁって思ってたんだ・・・」


何故だか急に僕は車の中で語り始めた。

それはある意味「告白」。

と言っても愛や恋でなく、くるみに対して思っていた、本当の気持ちということの。


すると、くるみはさらりと言いのけた。


「良かったじゃん・・・。心が通じ合っていて・・・」


なんかとっても大切なことを二人ともさらりと言ってのけたのかもしれない。

もしかしたら限りなく「告白」に近くなってしまったのだろうか?


もうすぐくるみの家に近づこうとしたその時


「ねぇ、天下一品のラーメンって美味しいの?」


「うん、京都にいた時はよく食べていた。こっちに来てからも史恵や白坂さんとか連れて行ったけど美味しいって言ってたな」


「じゃぁ、次は天下一品ね!!」


あまりにもスムーズな展開で逆に一瞬躊躇しかけたけど、すぐに


「うん、いいよ」


と答えた。

今回はバイト代が足らないことは口実で二人で話してみたいと思ってくれていたのだろうか。

ま、こっちもそのつもりで今日の店を選んだのだけど。


そして数日後、二人は天下一品に来ていた。

箸が立つような濃厚なスープはあっさりしたイメージのある京風ラーメンとはまったく別物である。

そして、こうしていつの間にか、くるみと一緒にいることは自然な感じになっていった。


天下一品に行ってから数日後のある平日の昼間。

パートで先日、白坂瞳と一緒に郁子ちゃんのことで非難してきた東さんが


「郁子ちゃん入院しているんだって?寂しいのじゃない?」


とからかってきた。


つい、ちょっと本心が出てしまった。

「実は・・・今さ・・・瞳とか他のバイトに言わんどいて欲しいのだけど・・・。

くるみと仲が・・・良いかもしれない」


東さんも真面目な顔になり


「へー、お似合いじゃない・・・くるみと店長って似合っているよ」


「そう?なんで?」


「よく分からないけど・・・なんとなく。うん、お似合いだよ」


今まで史恵や郁子ちゃんの時は嫌悪感をむき出しにしていた東さんがくるみの時だけはなぜだか好反応だった。

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