↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/101

裏表

2000年12月初旬


くるみと食事に行く約束をした数日後の平日の16時頃のこと。

平日のこの時間はまずお客さんもいないので14時30分から17時まではバイトなしである。

そして、この日もその時間はお客さんがいなかったので控室でシフト作成など事務作業をしていた。


すると久し振りに3年生の白坂瞳が仲の良いパートさんである東さんと給料を取りにやってきた。

そう言えば夏休みを越えた頃から瞳はバイトに来る回数がぐっと減っていた。

進学組でないので本来なら時間にゆとりがあるはずなのに。


二人で来るなり


「店長!!今日は文句がある!!」


といきなり斬りつけるように話し掛けてきた。


「えっ、なに・・・」


「もうさぁ、郁子ばっかり贔屓しすぎじゃない?」


「えっ・・・そう・・・かなぁ」


“むしろ、ちょっと前まで芽依と仲が良かったし・・・

くるみとも約束したばかりだし・・・・

そもそも、お前だって一緒に二人で食事に行ったことが数回あるじゃん・・・

それ以外にも東さんとセットで服を買うのにショッピングセンターに付いてきてもらったこともあったのになぁ・・・”


と思ったけれど、火に油を注ぐ気がして言うのは止めた。

因みにステーキワンはアメリカのカウボーイをイメージした店なので、制服は自前でデニムの上下を揃えないといけない。

一人で服を買うのが苦手だから付いてきてもらったことがある。

とにかく、それからも東さんとふたりで延々と郁子ちゃんのことで文句を言い続けた。


この年の春から松本にお店を任せていたので店に来るのは松本が休みの週に2回の平日。

後は、土日のピーク時ぐらいだったので、そんなにお店にべったり張り付いていた訳ではなく、それほど郁子ちゃんと喋っていたつもりも機会もなかったのに。


確かに内気で人見知りの郁子ちゃんは他のバイトとはあまり話さない。話し掛けるのが苦手というのが正確なところ。

あえて言うなら同じ中学出身のくるみぐらいしか話し相手はいない感じはあった。


その無口な郁子ちゃんが僕とは目と目で会話するようになっていたし、バイトが終わっても控え室に少し残り僕と少し話してから帰るようになっていた。


そのあたりで一部のバイトが郁子ちゃんに反感を持っていたようだった。

店長に媚を売っていると。

もともと、郁子ちゃんが面接に来ると分かった時点で同じ中学出身のバイトが騒いでいた。


「郁子って絶対店長の好みでしょ? おとなしくて目がクリっとしてる可愛い感じだから」

と直接言ってくるバイトもいた。


ただ、受験生でもある郁子ちゃんとは夏休みに予備校の代々木ゼミナールに併設の参考書売り場である代々木ライブラリーに連れて行ったことはあるが店で一緒に食事を取ったこともなければ、一緒に遊びに行ったこともない。


それだったら芽依とのほうが話す時間も一緒にいる時間も多い気がするが瞳は僕の本心を見抜いていたようだった。

お気に入りは郁子ちゃんであることを。


17時前になってくるみが来て、ようやく白坂瞳と東さんが入れ替わるように帰って行った。

去年の夏に一緒に「ステーキワン豊田店」へ視察に行った時に瞳はイケイケの挑発的な服装をしていた。


そして、東さんは


『瞳はいい子だよ。素直でプロポーションもいいし・・・瞳にしなよ』


とよく言っていた。

冗談か本心か分からなかったけれど。


くるみが来て

「いやぁ、今大変だったよ。白坂と東さんに鷹羽さんのことで責められて・・・」

と瞳と東さんの前でくるみに声を掛けたら


「えー、一緒に文句言いたかったな・・・。二人で控室にいたら『もう、出てこなくていいわ』と腹が立っていたから」


と意外なことを言い始めた。

近々一緒に食事に行く約束をしたばかりなので味方になってくれるものとばかり思っていた。


そして、それ以上に意外だったのは、くるみは僕のことなど無関心というか嫌いかなと思っていたし、郁子と仲が良いと思っていたけど、実は僕と郁子ちゃんと話しをしているのを快く思っていないことだった。

今まで散々憎まれ口を叩いていたのは関心の裏返しだったからなのだろうか。

それならば、先日真っ先に芽衣に対する僕の態度の異変に気が付いたことの説明がつく。

ひょんなことで人の気持ちの裏表が入れ替わることを改めて思い知った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。