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A面とB面の狭間で

給湯室前で女性スタッフ同士がぺちゃくちゃ話すのはよく有るシーンだけど(正に井戸端会議)、男女ペアは結構珍しい。


あまり目立つのも良くないので、ホントはもっと喋っていたかったけど、切り上げざるを得ない。

話し終わった後に、(あの勢いでLINE交換とかすれば良かったなぁ・・・)と思わず思ってしまった。


社内なので当然会社のメールや社内SNSでは繋がっているけど、次男と河内さんの親戚の子との合コンの話しを社用携帯とかではあまりしたくない。


あのまま給湯室前で「じゃぁ、LINEとか教えてよ」と言えばスムーズだったけど、その最大のタイミングを失ってしまった。

改めて冷静になると涼葉もいることだし、涼葉に言えないことはしたくないしなぁ・・・との思いもある。


涼葉のことは大好きで、愛情面では問題ないけど、世間体を気にする彼女がいわゆる「不倫関係」である事自体に悩んでいる事は分かっている。

普段は一人の主婦としての「A面」と僕と一緒に過ごす女性としての「B面」の二つの世界があるので、逢瀬の後に一人帰路に付く時に「B面涼葉」から「A面涼葉」に戻らないといけないのだが、その切替が難しいといつも泣いていた。


明るくて誰にでもニコニコしていて、あっケンカランとしている河内さんと仲が良い男・・・それが誰かは分からないけれど・・・が羨ましかった。

こういう人なら気楽に一緒にいれるだろうから、こういう人を選び選ばれた人って良いなぁって。


数日後・・・

非常階段で涼葉と少し電話していたが、ちょっと重い内容で少し気持ちが沈んだ。

いつものことだけど、二人の問題でなくパート先での愚痴とか、家庭での不満で。

執務室に戻ろうとした時にトイレから戻ってきたのか同じタイミングで従業員入口で河内さんにばったり会う。


その時、さっきの電話で少し気持ちが沈んでいたせいか、そんな事言うつもりもなかったのに気が付くと

「LINE ID教えてよ」

つい、そう言ってしまった。


すると、河内さんは即答で「やだねー」と言ってきた。


この瞬間にはもう執務室に入ってしまうから、「分かった」と言ったままこれ以上話すことも出来なかった。


もともと、僕には従業員入口の扉をわざと閉めるなどイタズラっ子でもあるから、さっきの言葉がどこまで本気が冗談か分からないけど、セクハラの定義としては「相手が不快に感じた」らセクハラなので、この場合は河内さんから「ノー」と言われたのだから、もうこれ以上仕事以外でのプライベート的なことで関わる事は出来ないのが自分の中でのルールだった。


シンプルにあくまでただの同僚でそれ以上のものは河内さんにはなかったのだから、もしかしたら個人的なことをいろいろ話せるようになったといつの間にか勝手に勘違いしてしまった自分がとても恥ずかしい。

きっと、河内さんから内心『なにあいつ、ただ同僚だから適当に合わせていただけなのに勝手に異性扱いしてくるなんて気持ち悪』って思われたかと思うとなにかどうしようもなく自己嫌悪に陥ってしまう。


ただ、大学卒業してからこの間の彼女の数は平均男性より多い方だと思うし、今までそんな大きな勘違いはしてなかったつもりだったんだけどなぁ・・・

前回『このまま一緒にいたいなぁ』と思った里江とは仲良しになったし、それまでも同じように思った人とは同じように仲良くなっていた。

だから、余計に結構凹んでしまった。


まぁ、でも仕方ない。

早めに勘違いと気付いて良かったと思うようにしようと気持ちを切替えた。


それから、数日後に大会議室に部ごとに開かれる社内説明会があった。


三人掛けテーブルで横三列、縦六列の配置。だいたいは真ん中が空いて二人座るのだけど、前の方とかは司会者と近いので人気がなく一人で座ったり、中には仲の良いグループで三人座ったりしている。

僕はたまたま早く行き、一番後ろが空いていたので普通に三人掛けテーブルで真ん中を空けて二人で座っていた。


開始直前に河内さんが慌てて入ってきたのだけど、他にも席が空いていたのに一番後ろの席で真ん中を空けていた僕の隣に座った。

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