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ShotBar 13th door 千冬の業務日誌  作者: 夜叉騎士
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【56杯目】潜入⑨

伯爵はご子息と男爵の関係は知らなかった。

とぼけている可能性もないことはないが、他のトラブルを語っていた様子からそうは思えない。


どうも最初に行いたい調査内容からは外れている気がしないでもないが、当事者の内の一人が殺害された。

それだけで介入する必要はありと認め、調査を進めることにした。


そして伯爵に今までの内容を踏まえた上で質問を重ねる。

しかし、これ以上の新しい情報は出てこなかった。


疲れがピークに達した伯爵の御令嬢は夫人の膝の上でお眠だ。

これ以上の聞き取りは無用と感じ、席を離れることにした。


「伯爵様、また何か分かれば知らせますので、一旦はこれにて失礼させて頂きます」

「うむ、頼むぞ」


私と自称妹令嬢はその場から離れ、次の聞き取り先を探す。

その間にも私兵の聞き取り捜査は進んでいたようで、目的の一人であった眼鏡の商家の男、つまり後から追いかけて行った側へと変わっていた。


「お、俺は見たんだ!あ、あいつが毒を盛るところを」


そう言って伯爵令息に付き添っていた御用商人を指差した。

私兵に引きずられてくる御用商人。

私は人目を避けながらも詳しく聞こえる範囲まで近づく。


「やってない!やってないぞ、なに噓を言っているんだ!こいつ、私が儲けているからって嫉妬でそんなことを言っているだ!」


取っ組み合いになりそうなところを複数の私兵が引きはがす。


「わかった、わかった。双方聞いてやるから、落ち着け」


隊長が鷹揚に二人を宥める。


「まずはお前からだ。どこでいつそれを見たのか?」


少し落ち着いた眼鏡の商家の男はそれに答える。


「場所は中庭のガゼボのひとつ。そして時間は……そうだ、時間は音楽が一旦鳴り止んだ頃の筈」

「それで?」

「ガゼボには男爵夫妻が待っていた。そこに伯爵令息と御用商人が合流して…。

 そう、その後に四人がテーブルを取り囲んで…ワイン?で乾杯している様に見えた。

 男爵お付きの執事とメイドがいたのにも関わらず、御用商人が酒を注いで回っていたから、そのときに毒を入れたんだ」

「違う!私はやっていない!」


再び御用商人を抑え込む数名の私兵。


「…で、後はどうか?」

「男爵がうとうとしだして寝てしまった。

 男爵が酔い潰れてだと思うが…お開きになったらしく、ガゼボに男爵と男爵付きの執事を残して、後の方々は会場に戻っておられた。

 私が見たのはそこまでだ」

「それ以外に気になったことはなかったか?」

「メイドがブランケットの様な物を男爵にかけていたな。本来は男爵夫人付きのメイドの役目ではなく、男爵付きの執事が対応するだろうに」


それは私も気になっていた。

遠くからだったから詳細にはわからなかったが、それでも普段鍛えている目では優しそうな表情っぽく見えた気がした。

乾杯の場面は間に合わなかったが。


「お前にさっき聞いた話と随分違うなぁ、おい、んん?」


隊長は御用商人に向き直り問いただす。

何も言えずに無言で顔をそむける御用商人。


「確かにその方々とワインを飲んでいたことも注いで回っていたことも認めますよ、ええ。ですが、やっていません。

 やるわけがないじゃないですか。懇意のお方に手をかけて、私の得は何がありますか?何もないでしょう?」

「では、詳しく言い訳は別室で聞こうか。なぁ?……おい、別室へ連れていけ」


おとなしく私兵に連行される御用商人。

観念したように見えるが…


まだ疑問は手に余るほどに残っていると思えた。

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