64/88
073⚫️微かな言い伝え
魔物とは、時をさかのぼれば本来 「真者」真実を知る者、
知恵ある者 と自ら名乗ったことに由来する。
あるいは、かつて彼らが暮らしていた高地を
「Mt. Star」、星の山と呼んだことに始まり、
その響きが時代の摩耗の中で
モンスター(monster)へと転じたという側面もある。
苛酷な土地を生き延びることは、彼ら彼女らの肉体を強靭化させていく。
そこへ、あるとき突然現れた 「聖なる’人々’」 が、
‘科学という名の魔法’を授けた。
仕組みは理解しきれずとも、使い方と限界だけは確かに受け継がれ、
その技は徐々に彼らの生活に溶け込んでいった。
こうして、もとは同じニンゲンだった者たちは、
時の流れと土地の差、伝わる技の違いによって、
いつしか 「魔物」と「ニンゲン」という二つの集団へと収斂していった。
‘科学という魔法’を伝え「聖なる’人々’」についての伝承は、
今ではほとんど失われてしまった。
そのわずかな 残滓だけが、
古老たちの語る物語の端々に、
風化を拒む囁き声のように、微かに息づいている。




