072⚫️境目はあるのか 夢に見る思い出の笑顔
「ねえガウ。魔物とニンゲンの境目って、どこにあるんだろうね?」
「うーん、そうだな。オレは限りなく魔物に近いニンゲンだし・・・。」
「わたしは、限りなくニンゲンに近い魔物、だよね。」
「あ、アレだ! 自分でどう思うか、ってことじゃないか? ほら、子どもと大人の境界線みたいなもんだ。」
「子どもと大人の境界線?」
「そう。若くたって自立してるって思ってるヤツは大人だ。反対に、年食っても誰かに寄りかかってばかりなら、そいつは子どもだろ。」
「な〜るほど。そう言えば小さい頃、’魔物らしくしなさい!’ってよく叱られたっけ。」
「オレも’ヒトとして恥ずかしくないのか!’って怒鳴られてたなあ。」
「じゃあ、魔物もニンゲンも、本当はおんなじなのかな?」
「ま、自分で決めればいいんじゃないか。そもそも、魔物かニンゲンか、なんて括り方自体がおかしいと思うぜ、オレは。」
・・・・・・・・・・・・・
遠い昔の記憶である。
「わたし? 地球人よ。ふふ。」
そう答える彼女の笑顔は、突き抜けるように眩しかった。
学生時代、ボランティアで出かけた集まり。
海外から日系の保護者に連れられてやってきた子どもたち。
日本語も操るが、どこかぎこちない。
それでも、年齢の近い私たちが顔を出すと、
みんな、弾けるような笑顔で歓迎してくれた。
そんな時、同じボランティアとして出会ったのが、彼女。
心底、驚かされた。
英語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語にイタリア語・・・。
さらには、どこで覚えたのか広島弁や名古屋弁まで使いこなすのだ。
ある子どもが、不思議そうに尋ねた。
「おねえちゃんは、何人なの?」
彼女は迷いなく、優しく答えた。
わたし?地球人よ、と。
国籍なんて関係ない。
通じ合おうとする心があれば、拙いジェスチャーだって最高の言葉になる。
今でも忘れない、彼女のあの瞳。
一生、憶えている。絶対に忘れない。
「弁務官、起きてください!難民キャンプに着きます!」
激しい車の揺れとともに、声が鼓膜を叩いた。
「・・ああ・・・ごめん。夢を見ていたんだ。学生時代の、大切な夢を。」
意識が急速に、砂埃の舞う現実へと引き戻されていく。
わたしはやる。やるんだ!




