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069●期待に応える新人たち

「じゃあ、ここでね。」

「おう、無理すんなよ。」

「ガウこそ。怪我したら、すぐにこっちに来てよ。」

「あいよ!」


わたしたちが、このダム建設現場に来て、三日になる。

岩肌に反響するツルハシの音、湿った風に混じる湿泥と油の匂い。

就職斡旋場では、ガウの怪力とわたしの治癒力が買われて、ここを紹介された。

魔法で岩は砕けても、運ぶ・組む・締めるは筋力の出番だ。

その点、ガウはうってつけ。

二人一組のリフト作業でも、彼は一人で梁を肩に載せ、

合図に合わせて足場のピンに落とす。


わたしは現場隅の簡易医療テントで、

切創には凝血の糸魔法、打撲には熱抜き、ひねりには腱の緩和。

来る人が、みんな「助かった」と笑って戻っていく。期待の新人、だって。

‘ハズレ’って言われるかと思っていたのに、ここでは違うみたい。

お給料をためて、またガウと旅を続けるんだ。


「おい、今度の新入り、ふたりともすげえな。」

「あんちゃんほどの怪力、そうそういねぇぞ。あれ、素性隠してる名のある魔物じゃねぇか?」

「パワーだけなら魔王級だよ、あれ。」

交代要員待機所の方から、作業員たちのひそひそ声が聞こえる。

「嬢ちゃんの魔力も半端ねえ。潜在魔力量が多いんだろな。」

「あそこまで魔力を練れるってことは、いろんな修行をくぐってきたんだよな。」

そうかな?・・・ちょっと、うれしい。


「ありゃ?」

だれかが声を上げた。視線の先で、ガウが動きを止めている。

両腕に載せた岩をそのまま、そっと膝で支え直した。

「えっ、バッタがいたから、どかしてから置くのか。」

「やさしいなぁ・・・。」

ガウは掌で小さなバッタをすくって、草むらの方へ軽く放した。

それから、何事もなかったように合図を待って、所定位置に岩を静かに下ろす。

誰かが、ぽつりと言った。

「・・・ああいうの、好きだな。」


わたしも、そう思う。

だから、ここで頑張れる。

期待に、応えたいから。

だれかの役に立ちたいから。


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