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068●理性的対応
腹も心も満たされて、屋台を離れかけたところだった。
背後から野太い声が飛ぶ。
「おい、嬢ちゃん。その銅貨と紙貨、偽物じゃねぇだろうな?」
・・・は?
別の屋台の主らしい。太い指がオレのポケットを睨んでいる。
リンリンは即答した。
「偽物じゃないよ。秤を見る? 相場板でもギルド印でも、どれでもいいよ。確認はお店の権利。でも・・・侮辱は違うよ。」
そう言って、さっきの紙貨の透かしを正面にかざす。
光が通り、紋章と連番が浮かんだ。
周囲の客が 「うん、うん」と小さく声を漏らす。
帽子の店主が片手を上げた。
「うちで秤合わせ済みだ。つりも返した。口を慎め。」
ぴたり、と空気が静まった。
荒い声の主は鼻を鳴らして、店の奥へ引っ込む。
店主が苦笑して肩をすくめた。
「市は混んでくると、こういうのが出る。悪かったな。・・・また来てくれよ。」
「おう、また来る!」
オレは笑い返しながら歩き出す。
ポケットの中で、黄色い石を指で撫でた。
リンリンが’無くすといけないから、ガウ、持ってて!
でも、わたしのもんだからね!って言ってたな。
匂いと、約束と、腹の虫。
なんだか、街はその三つで回ってる気がした。
横でリンリンが笑う。
「ねえ、ガウ。次のお店、おかわりする?」
「もちろん!」
ううん、正直な腹が、ぐうと応えた。




