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第七十四話 結界術師、善戦する

                           第四章 桜花

                      第七十四話 結界術師、善戦する



 俺と雅は互いに、仲間の仇であるデルダを狙っている。一応協力関係ではあるが、奴をどちらが倒すかは早い者勝ちとなっている。つまり、仲間という訳ではないのだ。彼のことをわざわざ助ける義理はない。

 だが完全に俺が攻撃を止めると信じて、彼は行動をしている。それにデルダの攻撃を防げないと思われるのは癪だ。

 再び普通に結界を張るだけだと、流石に次は二枚とも壊されてしまうだろう。三枚結界を張ればいいだけかしれないが、それでは結局奴のスキルを防ぐことができない。

 俺が密かに特訓してきた結界の、集大成を見ることになりそうだ。俺は魔力を練り上げ、奴の拳に合わせて一枚の結界を張る。


「強度を上げたか…」


 デルダが自分の拳を止めた、結界を見てそう呟く。魔法等は魔力を込めれば、込めるだけ威力が上昇する。しかしその方法だと、魔法が暴走する確率がかなり高くなるのだ。また扱い辛くなるため、上手にコントロールができない者が行えば、暴走しなかったとしても威力が落ちてしまう。これは魔力に余裕のある者が行う技術なのだ。

 同じ魔法でも高レベルの魔術師が使う魔法がより強力なのは、魔法に込められた魔力量の差からくるものである。レベルが上がるということは、魔力のコントロール技術が上昇するということだ。

 つまり同じ魔力を込めたとしても、効率よく魔力を込めることができるため威力が上昇するのである。これは普段から、皆が無意識の内に行っていることだ。

 それを意識的に行うことで、より魔法に魔力を込めることができる。

 俺の場合は、それほど魔力コントロール技術が優れているという訳ではない。結界術師が魔術師系と言っても、結界以外の魔法は使えないのだ。それほど魔力コントロール技術が必要な職業ではない。また職業以外にも、人によって向き不向きというものもある。

 密かに練習していたとはいえ、元々結界に必要な魔力が少なくなければ、成功させることができなかっただろう。以前勇者パーティーにいた賢者のフレアと戦った際には、結界を小さくすることで質を向上させたことがある。

 だが、結界を小さくするのには限界がある。それに比べて、この方法ならば大きさを変えずに質を上げることができるのだ。

 欠点があるとすれば、魔力の消費量だろう。一枚で結界三つ分くらいの強度を誇るが、その分結界二枚以上の魔力を消費することになる。普通に張った結界を簡単に突破して来る魔物は、そうはいない。そのため、普段は普通の結界の方がいいだろう。

 また、あまり自由が利かないということもある。この技術は、繊細な魔力コントロールを伴う。なので、無茶な形や大きさの結界を張ることができない。


「まだまだ行くぞ」


 デルダが残った五本の腕を使い、連打を雅へ浴びせる。


「舐めるなよ」


 彼はそれを冷静に対処していった。流石に、全てを回避することはできない。回避できないところは一切見ず、次の拳の軌道を見据えている。俺が結界を張り、彼が見もしないそれを対処していった。

 今使っている結界は、魔力を練り上げる必要がある。それほど時間は掛からないが、流石に五本の腕から放たれる、魔王軍四天王の拳に対応する速さでは展開できない。

 俺が結界を張りそこなえば雅が拳の直撃を受け、雅がいなくなれば奴の連打に俺が対応しきれなくなるという状況だ。どちらか一方が欠けても、デルダを倒すことができないという状況だった。

 攻撃を回避する彼は、決して刀で拳を防ごうとはしない。そもそも、居合の構えを解いていないのだ。そこには、隙あらばもう一度居合切りをするという強い意思を感じる。

 デルダもそれが分かっているのだろう。連打の中に、時折隙を見せることがある。だが、これは罠だ。すでに動きを見切ってるので、居合切りにカウンターを決めるつもりだろう。雅もそれは分かっており、絶対に飛び出そうとはしない。

 居合切りは一撃必殺だから強いのだ。何度も見せていては、その強みがなくなってしまう。すでに雅の攻撃は奴に防がれているので、絶対に当てられると思えるほどの隙を見つけるまで動けないのだ。

 どちらも有効打を与えられないまま、俺達とデルダの攻防が続く。いつの間にか、後方に桜花の兵士達が集まって来ていた。あちらは決着が着いたようだ。奴との戦いが、それほど長く続いているということだろう。

 六助や黒も揃っているが、戦いには混じって来ない。時間稼ぎをするだけで、彼等は精一杯だったのだ。自分達の実力差を分かっているため、自重しているということだろう。

 結界による防御は、デルダに少しずつではあるがダメージを与えているはずである。神殿跡地でも体当たりや噛み付くといった攻撃をしていた魔物は、皆ダメージを負って倒れていった。これは反撃の能力がある訳ではなく、純粋にその硬さで肉体で攻撃する者にダメージを与えているということだ。

 そのため肉体以外の攻撃では、ダメージを与えることができない。元々そのような能力を持っている訳ではないので、それでも有難いことである。

 俺の結界は魔力をそれほど必要としないが、それでも少しずつ使っている。さらに、今の結界はより多くの魔力を消費するのだ。相手はスキルを使わずに拳で戦っているので、持久戦ともなればこちらの魔力が尽きる可能性もある。

 結界で与えているダメージは微々たるものなので、流石に魔力が尽きる方が先だろう。


「暴虐の一撃!」


 この攻防に飽きたのか、奴がついにスキルを使った。流石に強化した結界でも、一枚では止めることができなだろう。

 二枚の結界を同時に展開し、さらに破られた時のために結界の準備をする。

 六助が巨大な銃を撃った時のような轟音が、部屋中に響き渡った。俺の結界は、どうやら二枚とも割れてしまったようだ。さらに結界を、二枚展開する。

 一枚が割れ、もう一枚の結界がようやく拳を止めることに成功する。この結界は一枚で三枚分の強度を誇るため、一度のスキルで九枚の結界を破壊したということだ。流石に一瞬で九枚の結界は張れないため、この結界を練習して本当によかった。


「隙あり!」


 スキル後の隙を突き、雅が居合切りを放つ。侍という職業は、一つ一つの動作がとても速い。刀という鋭さが特徴の武器を使うので、素早い攻撃をすることに特化させているのだ。素早いと言っても、決して足が速いという訳ではない。

 踏み込みや刀を振る速度が、とても速いというものである。侍の中には黒のように足の速度を重視している者達もいるが、侍がそういった職業ではないということだ。

 雅も大きな刀を持ち、明らかに速度重視ではない。だが彼は俺と同じで、スキル詠唱を省略することができる。彼の踏み込み速度も速いため、かなりの速度でスキルを相手に放つ。


「グアッ!!!」


 デルダが苦しそうな声を漏らす。咄嗟に腕をクロスさせてガードしたようだが、雅の一撃には耐えられなかったようだ。

 奴の腕が二本、血を撒き散らしながら宙に舞う。


「このタイミングの攻撃を止めるのか…」


 雅の振るった刀は、デルダの胸を深く切り裂いている。だが、それは途中で彼の手によって止められていた。彼の一撃は大ダメージを与えたようだが、致命傷には至らなかったようだ。

 自分の腕を犠牲に時間を稼いだのだろう。さらに間に合わないと悟って、自分の体が斬られている途中で止めたようだ。

 普通の神経をしている者であれば、このような止め方はできないだろう。しかしこれのおかげで、奴は生き延びたのだ。誰も自分の体を犠牲にして、冷静に攻撃を受け止めるとは思わない。

 俺の後ろにいる桜花の兵士が、その光景に息を飲む。俺達も戦っていなければ、奴の行動を見て呆気に取られていたことだろう。

 雅が慌てて距離を取る。奴の雰囲気が、先ほどと大きく変わったからだ。


「流石に余裕を見せすぎたようだな」


 デルダの顔から、今まで浮かべていた余裕が消える。だが、決して焦っている様子はない。ようやく戦いに集中し始めたのだ。

 奴の六本あった腕は、すでに半分にまで減っている。しかし今の奴の方が手強いと、俺の勘が告げていた。

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