9
「そうしましたところ、さっそくウォルター先生が動いてくださり、各地の有能な魔術師を集める手はずになったのです」
どうやら、ウォルターは、息子が相当かわいいらしい。もしくは、その将来に期待をかけているのだろうか。ブランはふと、キリー村で岩の中にこもっていた青年のことを思い出した。
「そうかい、つまりは、あたしの他にもあちこち声をかけてるってわけだね」
「え、ええ」
ハートストンは、またしても動揺して汗を拭く。ブランもてっきり「あたし一人じゃ不満ってことかい」とでも怒り出しそうなアリッサが、むしろ楽しそうにうなずいている姿に面食らっていた。どうやらライバルがいるほうが燃えるようだ。
「それでは、協力をお引き受けいただくという事でよろしいですね」
眉ひとつ動かさずヒルダが問うと
「ああ、いいよ」
アリッサは即答した。ハートストンがホッと胸をなでおろす。
「それでは、明日の正午に議員会館にてウォルター先生と直接お会いいただく形になります。介護士の方もご同行よろしくお願いいたします」
「えええっ!!!」
ここへ来ていきなり自分に話がふられたので、ブランは仰天して声をあげる。
「先ほど、ツールース施設長から、担当介護士であるブランさんの同行について要請を受けました。特に問題ないと思いますので、私の一存で許可を出させていただきました」
「い、いやあの…ちょっと、それは」
先ほどのハートストンばりに、ブランはしどろもどろになる。平凡な一市民が、いきなり明日、この国で有数の政治家の前に出ることになったのだから、それも仕方ないとは思えたが。ブランは助けを求めるようにアリッサを見る。しかし、彼女は知らん顔を決めこんでいるようだ。
「それでは、失礼させていただきます」
ヒルダが、無駄のない動きで立ち上がり、部屋から退出する。その後をハートストンが、無駄の多い動きであわてて追いかける。二人が出て行く後ろ姿を、口をパクパクさせて見送るブランであった。




