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「さすがですね、気づかれていましたか」
ふいに室内に若い男の声が響き渡った。部屋にいたものたちはあわててあたりを見回すが誰の姿も見つけられない。
「まあな、最初は気のせいかとも思ったが、ダラスが死んだ後、徐々にあんたの気配が強くなってきたんでね」
「確かに、ことの重要性が増したため、送りこむ気を強くしましたが、並の魔道士では気づかない程度に調整はしたのですよ」
「そりゃあんた、ずいぶんあたしを見くびってくれたもんだ」
「いえいえ、わたしの中でアリッサの評価は非常に高いですよ」
一同は、このアリッサと謎の声のやりとりを口をポカンと開けて見ていたが、ウォルターが思い出したように声をあげる。
「この声…知っているぞ。おお!!そうだ、そなたは」
「ウォルター様、姿もお見せせず、大変失礼いたしました…」
ジジジジジ…
ノイズのような音と同時に、部屋の片隅に一人の男の姿が浮かび上がった。
「ノルン殿!!」
ウォルターが声をあげる。彼らの目に映ったのは、長身の美しい若者だった。
サラサラとした黒髪は肩まで垂れ、絹でできた紫色のローブの上から白、黒二枚のマントをかけている。
目は常に閉じられており、額には中心に青い宝石をはめ込んだサークレットが、首からは呪的な力を高めるための水晶玉や銀の首飾りが幾重にも下げられ輝きを放っている。
しかし、彼はどうやらこの場にはおらず、何らかの術法によって、自分の映像を飛ばしているようであった。その証拠に彼の姿は半透明で後ろの壁が透けて見え、ジジ…という音がするたびに、彼の姿が、平面的に歪むのが見てとれた。
「久しぶりだねえ、ぼうや」
「はい。アリッサもお変わりないようで」
「何と!!お二人は知己を得ていたのか」
「まあね」
顔見知りらしい三人の会話に、興奮の余り顔面を真っ赤にしたハートストンが口を挟む。
「ノ、ノ、ノルン様ですと!?で、では、あなたがあの、ドルクロスの魔道大公の一人であられる―」
彼のやや噛み気味の質問に、ローブ姿の青年は静かに微笑んで答える。
「ええ。確かにわたしは、魔道王国ドルクロスの三大公が一人、ノルン・セタ・フォビュアです」




