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「レイロック、とそいつは名乗ったんだね?」
「ええ…彼が…わたくしの望みを叶えると…かわりに…それを利用して…魔術師達を…集めろと…」
「それで、あんたはレイモンドを望んだってわけだ。それが叶うと、今度はウォルターにそれとなく魔術師集めをするよう勧めた」
「そう。わたくしは望んだ…いつまでも…いつまでも…若い姿のままの…ウォルターを…決して…わたくしの側から離れない…ウォルターを…」
すでにヒルダの壊れかけた意識の中では、ウォルターとレイモンドが混同されてしまっているようだ。
「そうかい」
アリッサは、ヒルダの感傷など露ほどにも感じた様子を見せず、つけつけと質問を続けた。
「それであんた、昨日の夜は廃倉庫にいたね」
「ええ…ハートストンにここに送ってもらった後…すぐにレイロックの使い魔が来たの…それですぐに倉庫へ行ったわ…そこでレイロックに玉を渡され、窓から中に投げ入れた…」
「なるほど」
「だって仕方ないのよ…彼に逆らったりしたら…やっと手に入れたウォルターを…失っちゃうひ…うひ、うひひひひひひ、ウォルター!!ウォルター!!うひひひひひひ」
「ああ…」
シスター・サリサの忍耐強い魔力にも限界が来てしまったようだ。彼女はその場に膝をつき崩れ落ちた。それと同時にヒルダの人格も再び失われた。
「も、申し訳ありません」
「いや、充分だよ。無理させちまったね」
アリッサとしては、謎の巨人の正体をはじめ、まだ聞きたいことが山のようにあったが、シスターの体力を考えれば、これ以上質問を続けるのはあきらめざるを得なかった。
「ほ、他の神官を召集しましょうか?」
シスターの提案にアリッサは首をふる。
「今日のところは、これだけ聞けりゃ充分だろ。あんまり長時間魔法で覚醒させるのは、ヒルダにとってもよくないからな」
「確かにそうですわね」
ヒルダの奇声の発作はいったん収まったようで、今は揺り椅子の上で膝をかかえてガタガタ震えている。そのため、室内には椅子のきしむ音が不規則にくり返されていた。
「さてと」
アリッサはやれやれといった様子でため息をひとつついた。
「これで『人』の事件は一段落したね」
しかし、アリッサの目はギラギラと輝き、それがむしろ本当の勝負、『人』にあらざる者との戦いはこれからであることを物語っているようにブランには思えたのだった。




