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「レイモンド」
彼女はもう一度うっとりとつぶやいた。
「だってずるいわ…あれだけ…あれだけわたくしが努力して…ウォルター様への気持ちを封印したのに…レイモンドは…日に日に…あの頃の…わたくしが一番苦しかった頃の…うひうひひ…ウォルター様に…そっくりになっていくんだもの…」
「だから脅迫状を送った、と」
「そうよ…でもね…レイモンドは知ってたの…私が送ったってこと…うひひひひひひひひひぃぃ!!」
その時、ヒルダを照らす光が途切れ途切れになり、途端に彼女は錯乱しはじめた。
「す、すみません。アリッサさん」
シスター・サリサがアリッサにわびる。
「この光を一定の強さでずっと出し続けるのは消耗が激しくて…」
「ああ、すまないね。だが、もう少しだけがんばっとくれ」
「わかりましたわ」
シスターは呼吸を整え、再び手先に集中を向ける。その手の放つ光が再びもとの強さに戻ると、ヒルダは何事もなかったかのように続きを語り始めた。
「だから…レイモンドに呼び出されて言われたわ…『もうこんなことはやめてください。僕はあなたを尊敬してるんです』ですって…これって…うひ…人間としてありがたいけど、女としては屈辱よね…」
「それで?」
無感動にアリッサが先をうながす。
「それで…その晩…この…肖像画部屋で…一人苦しんでたら…『彼』が現れたのよ」
「『彼』とは?」
質問するアリッサの声には、慎重な響きが混じり込んでいた。
「そう…彼は…『レイロック』と名乗ったわ…魔術師レイロック」
ついに判明した黒幕の名に、部屋にいた三人はお互いを見交わした。




