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シスターは、ヒルダの前に立つと、その額に手をかざした。すると彼女の手から、春の日差しのようなあたたかな光がこぼれはじめ、ヒルダを照らした。
少し離れた位置から様子を見ていたブランであったが、不思議とその光を見ているだけで、心が洗われるような気持ちになった。
「ああ…ううう…」
ヒルダの虚ろだった目にわずかに生気のようなものが宿る。
「ううう…ウォルター様…お慕いしておりました…」
ヒルダからしぼり出すような声がもれる。
「なるほど、あんたはウォルターを慕っていた。恋仲だったのかい?」
アリッサの問いかけにヒルダは首を振る。
「ウォルター様は…何も知らない…その思いは…はるか昔に封印したのよ…どうしようもなく苦しかった」
そう言うと、ヒルダはおそろしく重いため息をついた。シスターがずっと彼女に向け光を放ち続けているため、彼女の苦痛に歪んだ表情はくっきりと浮かび上がっている。
「あの頃…ウォルター様が初当選し…議員として一番大事な時期だった…それに…すでに今の奥様と恋仲だった…すごくお似合いの二人でね」
「だからあんたは身を引いたと?」
「そう…うひひ…わたくしは…何回も何回も何回も自分の気持ちを押さえつけて…ようやく…秘書としてウォルター様に…尽くすことが…わたくしの愛し方…というところまで…気持ちを…うひひ…昇華させることに成功したのよ」
「そうかい。じゃあさ、今なんでこんなことになってんだい?」
そう聞かれると、ヒルダは恍惚とした表情になった。
「レイモンド」
彼女は寝台の方へ満足気に顔を向けた。




