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ひざまでの白い道衣と白いズボンという介護士の制服に着替えたブランは、三階奥の部屋の扉をノックした。「入りな」といういつも通りのぶっきらぼうないらえがあったので、ドアを開き中に入る。
居室の中では、真ん中にテーブルを挟んで、一人の老女と二人の男女が向かいあって座っていた。
老女というのはもちろんアリッサ。ブランが担当している『太陽の家』の入居者であり、元冒険者の魔法使いだ。黒い服に黒いスカート、オレンジ色の大きなストールを肩から何重にも巻きつけ、つばつきの帽子の上には様々に加工された花飾りがついている。帽子の下には、白髪に囲まれた顔がのぞき、相も変わらずふてぶてしい表情を見せている。
「おやブラン、今日も二日酔いかい?」
「ちょっ!!人聞きの悪いこと言わないでくださいよ!!」
いきなり初対面の、しかも政府関係者の前で、皮肉を言われて、ブランの顔が思いっきりひきつる。
「はじめましてブランさん、お話は伺ってますわ」
そんな二日酔いのやりとりには気もとめず、アリッサの向かいに座っていた女性が立ち上がり、ブランに握手を求めた。
「あ、はじめまして」
「ヒルダ・ログストン。ウォルター評議会議員の秘書をつとめております」
ヒルダと名乗った女性、年は三十前後だろうか。きちっと結い上げた髪に、ブラン同様メガネをかけた、恐ろしく知的で、やや堅物そうな雰囲気の女性だ。紺の礼服にスカート、首には赤いスカーフが巻かれている。
「え!!あのウォルター議員の!?」
ブランが思わず声をあげてしまったのも仕方ないだろう。フィンにおいて、ウォルターの名を知らぬものはほとんどいない。現在は、フィン評議会の副議長をつとめ、さまざまな議会改革、法整備をしてきた、フィンきっての有能な政治家である。
「ああ、はじめまして。フィン評議会付き魔道士のハートストンです」
ヒルダに続いて、でっぷりとよく肥った中年の男性が立ち上がった。頭頂部には球根の根のように申し訳程度に毛が茂り、鼻の下にちょこんとヒゲが生えている。茶色のローブをはおり、首からは、フィンの紋章が刻まれたメダルを下げている。
「ではでは、介護士さんも来たことですし、本題に入りましょうか」
額の汗を手布で拭いながら、ハートストンが再び座り直す。アリッサの部屋の椅子は、彼には少しキツそうだ。
ハートストンの「介護士さんも来たことですし」という言い回しに少し引っかかりを感じたブランであったが、とりあえずアリッサの後ろに立ち、黙って話を聞くことにした。




