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「ここいらか…」
アリッサがようやく歩みを止めたのは、議事堂を出発してから小一時間ほど歩いた後だった。
「倉庫…ですね」
三人がたどり着いたのは、ヨルムの北区と西区の境目近くにある倉庫街のはずれだった。
フィンの福祉産業を支える様々な物資が詰められている倉庫街の中で、アリッサたちがやって来たその一角だけは、他と様子が違っていた。
彼女たちの目の前に並ぶ十余りの建物は、老朽化のためすでに倉庫としての機能を終え、取り壊されるのを待っている、いわば「廃倉庫」たちであった。
「間違いない、あれだね」
アリッサが指さしたのは、月明かりに照らされる老いた倉庫たちの中でひときわ大きくそびえ立っている、さながら彼らのボスのような巨大な廃倉庫であった。
深夜のこのような場所に人影があるはずもなく、あたりは不気味に静まり返っている。遠くで犬の遠吠えが聞こえた。気の弱い者ならば、すぐにもこの場から逃げ出してしまうだろう。
そんな中をアリッサは、恐れげもなくのしのしと目的の廃倉庫の入口まで行くと、ブランたちの方を振り返った。
「さ、扉を開けとくれ」
観音開きの大きな鉄の扉は、鍵こそかかっていなかったが、錆びついていたため、ブランとブン・ラッハは二人がかりで少しずつその片側の扉を開いていった。
ギギィィィィィィ…
きしんだ音をたて、ようやく片側の扉が開く。片側だけでも充分人が通れる幅がある。外から見ると、扉の中は完全な闇に閉ざされていた。
「こりゃ暗すぎるねえ」
残る二人を戸口に待たせ、アリッサは悠然と中に入ると、魔法の光球を作り、上に向かって放り投げた。光球は、ふわふわとあがっていき天井あたりで止まる。倉庫そのものがかなり広かったため、光球の明かりだけでは全体がぼんやりと浮かび上がる程度であったが、中を歩き回るには充分な明るさだった。
「行くよ」
アリッサに声をかけられ、ブランとブン・ラッハも倉庫内へと入っていく。




