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にぎやかだった店内が一瞬で静まりかえる。
『夜夢』に入ってきた男は、明らかにこの国の人間ではなかった。浅黒い肌からは、南方出身であることが見てとれる。
しかし、南方出身者というだけであれば、いくら北国とはいえ一国の首都である。そこまで珍しいわけではない。
おそらく店内を静まらさせたのは、男の格好と、かもしだす特異な雰囲気によるものだろう。
髪はキレイに剃り上げられており、削ぎ落とされた眉があった場所の下には、白く濁った瞳がある。身につけている道衣は、もとは黄色だったようだが、今はすすけて茶味がかっている。
「ねえ、あの首のところ…」
ミネルバが、思わずささやいてしまったとおり、その男を一番不気味に見せるものがその場所にあった。首からかけられた数珠かざりには、どう見ても人の頭蓋骨とおぼしきものが、ぶら下がっていたのだ。
男は、店内を一瞥すると、ブラン達のテーブルにゆっくりと歩み寄ってきた。ナップが、反射的に腰の小剣に手をかける。
「お前」
男は、立ち止まるとブランの方に首を向け、唐突に口を開いた。
「強い、力…お前から、強い、魔力、感じる」
「ええっ!?」
いきなり衝撃的な言葉を浴びせられ、思わずブランは大声を出してしまう。まさか、思いがけず、自分にも魔法の才能があるというのだろうか。
「お前、そのもの、じゃない。お前の、近く、強い魔力のやつ、いるな」
ブラン魔法使い説は、あっさり否定されてしまった。そうなると、ブランに思い当たるのは一人しかいない。
「はい…いますが」
「やはり、いるか」
男の話す共通語は、かなりたどたどしい。しかしそれが、神秘的な印象を強める結果となっている。
「そいつに、伝えろ。近いうち、ブン・ラッハに会うだろう。ブン・ラッハの『魂の管理者』になるだろう、と」
その予言めいた言葉は、テーブルの三人には全く理解しがたかったが、男の持つ気迫に押され、ブランはうなづいてしまった。
「わかりました。確かにお伝えします」
それを聞いた男は、しっかりとうなづくと、そのまま向きを変え、店から出て行った。
残されたブラン達は、当然のごとく、男の正体について激論を交わすこととなり、それは明け方まで続いたのだった。




