48
裏門側にまで兵力を割く余裕がなかったようで、こちらには数名の騎士とブン・ラッハがいるだけだった。
騎士達は、ブン・ラッハを中心に円陣を組んで上空を警戒していたが、その周りにはすでにいくつか、負傷したり、こと切れた騎士達が倒れていた。
ブン・ラッハは、騎士達に守られながら、真ん中であぐらをかき、何事がブツブツと唱えていた。
「来たぞっ!!」
上空の夜空から、ものすごい勢いでワイバーンゾンビが獲物めがけて突っ込んできた。
「うわぁぁ、神様!!」
狙われた騎士は、構えていた矢を放ったが、震える手から放たれた矢は、全くあらぬ方向に飛んで見えなくなった。
ワイバーンゾンビの爪が今にも護法騎士の顔にかかろうとした時、ブン・ラッハが突如、歌のような、詠唱のようなものをよく通る声で奏で始めた。それは、北の地に住むブランには初めて聞くものだった。ブランは不思議と、ここがはるか南方の村であり、目の前で謎めいた夜祭りが行われているような錯覚におち入った。
「キシャァァ!!!!」
ブン・ラッハの歌を聞いた魔物は、急に苦しみはじめ、ジタバタとでたらめにあちこちを飛び回りだした。
「ど、どうしたんでしょうか?」
ブランがおそるおそるアリッサに聞く。
「精霊の力だよ」
アリッサの答えは簡潔すぎてブランにはよくわからない。
ブン・ラッハは、全身に汗を浮かべ、詠唱を続けながらも不意に右手をあげた。すると、それを合図にしたかのように、彼の周りにいた護法騎士たちが、ばらばらとこちらにかけ戻ってくる。
「今んとこどうなってんだい?」
アリッサが恐れげもなく騎士の一人のマントを引っぱって聞く。幸い騎士は、アリッサを見知っていたようで、姿勢を正して話しはじめる。
「はっ!!我らが裏門にて苦戦しておりましたところブン・ラッハ様が来られました。これからあの魔物をうち倒す呪法を行う、しかし呪法の完成まで時間がかかるため、まわりを守って欲しいとのおおせでした!!」
「それで?」
「自分が右手をあげたら、自分の周りから離れて門の方へ行けとのことでしたので、そのようにいたしたところです!!」
そう騎士が報告を終えた時、ブン・ラッハの周りでは異変が起こり始めていた。




