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巡らした馬と綱によって仕切られた一角に来るとブランはハッとした。石畳の上に、すでに乾いて赤黒くなった血痕のようなものがある以外、そこには何も残されていなかった。むしろ、あっけないくらい灰色と暗い赤の二色しかないその現場が、逆に不気味さを引き立てているように感じられた。
その石畳の上では、南方の呪術師であるブン・ラッハが、何かブツブツと唱えながら、懐の小袋から白い粉をひとつまみとりだし、サラサラとあたりにまいていた。
「どうやら南方流の探査法のようですね」
急に後ろから話しかけられ、ブランは飛び上がりそうになった。振り向くと、そこにはいつの間に現れたのか、魔道王国ドルクロスから来た魔道士ダラスの姿があった。正確には、ブランではなくアリッサに話しかけたのだろう。
「ああ」
アリッサはそれだけ言うと、黙ってじっとブン・ラッハの様子を見つめた。他流派の流儀の邪魔にならないよう気を使っているようだ。あるいは、単に南方呪術の珍しさに魅せられていたのかもしれないが。
しばらくすると、ブン・ラッハは、こちらに向けて歩いてきた。
「だめだ」
ブン・ラッハは、表情を変えず、きっぱりと言い切った。
「ここは、切られた石ばかりで、精霊の声、とてもとても弱い。俺には、何も、見つけられない」
そう言うと彼は、その場にあぐらをかいて座りこんだ。選手交代で、今度はアリッサとダラスが中へ入っていく。二人は、魔術の系統があまり違わないのか、同時に探査をしても邪魔にならないらしい。アリッサは、散歩でもするかのように、血痕の周りを極めてゆっくりと歩きまわっている。一方ダラスは、少し後ろ行き、立ったまま片手を前に突き出し、何かを探る様子を見せている。
「そういえば、神官の人はこないんですか?」
ブランは、アリッサ達の邪魔にならぬよう小声で隣にいるハートストンに聞いてみた。
「ああ、彼女は神官ですからね。魔力痕を探査するような能力は持ってないんですよ」
「はぁ」
「逆に言えば、彼女には我々にない様々な能力もあるんですがね」
どうやら、魔法の世界にも、様々な系統もあれば、得意分野による棲み分けというのもあるようだ。




